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ラオール・ウォルシュ「白熱」のアクション

BeauMale
2012.2.24

「白熱」は 1949 年の作品で原題は「White Heat」で邦題はそのままである.ジェームス・キャグニーがまさに白熱と化した悪漢振りを示す映画である.ラオール・ウォルシュのフィルモグラフィーを見ていて驚かされるのは一年に三本も四本も撮っていることである.まだ観ていない傑作だと言われている「死の谷 (1949)」も同じこの年の作品で、「白熱」も傑作なので一年に同じレベルの傑作を幾らでも撮れる監督なのだ.数は少ないが今まで観たラオール・ウォルシュ作品でこれは駄目だなというものは無い.そしてどれもが力強くアクションに満ちている.「十月」で書いたようにアクションはカット・イン・アクションという意味である.

YouTube - White Heat - Official Trailer [1949] 「白熱(1949)」予告編


アクションカッティングに満ちたこの作品冒頭から驚かされた.カリフォルニア州の州境という標識の出たあとこの画面である.黒い煙をもくもくと吐き音を立てながら機関車が中央奥から左手前に勢いよく進んで来る.画面から出ていきそうな所でカットではなく驚くことが起きた.

White Heat Hosted by Picasa

こんな何も映っていない画面を出すしかないがキャメラは右へ横移動するのである.観ていて普通ならカットして列車を違う角度で捉えるか、車内の画面だと思ったらいきなりの素早い横移動である.

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移動した先は汽車の位置より高い位置にある道路を一台の車がこれも疾走してくる.

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そしてカットされてショットは車の内部へと変わりコーディー・ジャレット役のジェームス・キャグニーが登場する.

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列車の中では二人の男がピストルで二人の車掌を脅している.列車を止めるよう強要しているのである.抵抗したため車掌二人とも射殺されピストルの男の一人が列車を止める.

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コーディー達の乗った車は勢いよく坂を下り列車の踏切でコーディーと一人の部下を降ろす.コーディーは列車が出てくるトンネルの上に行き部下は線路の切り替え機で列車が引き込み線に路線を変更させる準備をする.

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列車が減速しだしたときコーディーがトンネルの上から飛び降り機関士に拳銃を向けてポイントの切り替えを行った部下に運転を変わらせ機関車を引き込み線に入れる.

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列車に乗っていた二人やその他の車に乗っていた部下達が郵便列車の戸口に爆薬を貼り付けて爆発させ財務省の金の入った袋を盗み出す.

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コーディーは機関士を撃ち殺し、更にその助手を撃ち殺すと助手の手が蒸気を排出させるレバーに触れてしまって、外に出ていたさっき機関車を動かした部下を直撃する.

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一味は山の隠れ家に戻ってくる.山は寒いが用心のため暖房は入れられずその不満が漏れる.コーディーに近づく男はビッグ・エドで彼はコーディーを追い落としてボスになりたいと他の子分に話している.奥で顔に包帯をして寝ているのが蒸気で全身火傷した男である.エドは何時奪った金を使えるのだと、中々使おうとしないコーディーに文句を言う.

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これはコーディーの母親(マーガレット・ワイチャーリイ)でこの親子の関係は特別である.母親の作っている料理を褒めると、手伝いがあれば早く出来ると小言を言い、コーディーは隣室で寝ている妻ヴァーナ(ヴァージニア・メイヨ)をたたき起こし手伝えという.ヴァーナは少しぐらい暖めても良いだろう、こんな寒いところじゃ蒲団に入っているしかない.奪った金を早く使いたいと文句を言うが、ガウンを羽織って起きてくる.

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母親とヴァーナは仲が悪い.

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ヴァーナがコーヒーをエドに作ってやるとコーディーは女房は給仕じゃない、自分でやれとエドを叱りつける.その後急に頭を抱えてピストルを発射して倒れてしまう.母親が慌てて介護して隣室に連れて行く.

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母親は苦痛に喘ぐコーディーの首筋をもみほぐしてやり気分は良くなるが、連中に弱みを見せては駄目だと言ってすぐには行かせない.

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コーディーが信頼できるのはこの母親一人なのである.母親は常々コーディーに世界一になれと励ましている.

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一方妻のヴァーナはものを強請るときはこのように甘えるのである.コーディーのことは基本的に恐れている.

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外の車にいた部下がいきなり入ってきてラジオで風が強くなるので通行止めになると言っていると知らせてきた.コーディーは直ちに出発を命じて知らせてきた部下は殴り倒す.バッテリーを食うのでラジオは禁じていたのである.火傷した男は置いていくことにする.一緒に連れて行ってくれと懇願するが医者を差し向けるからといって皆出ていく.包帯男の親友が医者は何時呼ぶかを訊くと、お前が医者だ、楽にしてやれと拳銃を持たせて部屋に戻す.殺しを命じられた部下は天井に向けて二発撃って、必ず戻ると言って親友を残していく.

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二台の車に分乗して別々に行く事になるが別の車に乗った、妻ヴァーナは窓越しに意味ありげにエドに合図を送る.

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エドの方も合図を送り返す.

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捜査陣はあの包帯男の死体を発見する.殺されなかったものの凍死していたのだ.火傷が蒸気機関車の列車強盗と関係無いか探っていると、服についた泥の組成が事件現場にお土の組成と同じだという事と、持っていた煙草にコーディー一味の指紋が残っていた.

捜査陣は母親を発見して後をつければ必ずコーディーの居場所が分かると彼女は見張られている.

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彼女の車に印が着けられ、カーチェイスが始まる.当局は三台の車で入れ替わりながら後を追うがこの肝っ玉母さんはつけられていることをすぐに察知してまんまと捜査陣を巻いて逃げてしまった.

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巻かれた捜査陣の指揮をするエヴァンスが偶然にも車の後ろにつけた印を発見して、車は応援を呼びに行かせて車から単身降りて見張っていると、コーディーが現れ車に乗り込もうとする.そこで拳銃を向けて手を上げさせようとしたが逆に撃たれて腕を負傷してしまう.

三人は直ちに逃走してドライブイン・シアターに紛れ、捜査の目から逃れながらコーディーは自首すると言い出す.母親は四人殺しているから死刑だそんな馬鹿なこと止めろというと、コーディーは自首は列車強盗ではなくイリノイのホテルでの窃盗だという.部下に命じてカリフォルニアの強盗と同じ時間に窃盗をさせ、アリバイを作ったのだという.

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コーディーは一人去って、女性二人は捜査当局の尋問を受ける.ヴァーナは泣き続けtれいればよい俺には長いこと会っていないことにしろというコーディーの忠告通りに尋問に答えていると、エヴァンスが私を撃ったくせに目の前で見たのだと云っても、二人は見ていず他に証人はいないだろうと早々に帰ってしまう.

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そしてコーディーのイリノイの事件での自供が発表された.

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捜査当局のエヴァンスはまだ傷が癒えていないが、先ずはイリノイの事件は自供を認めて次の手を打つことにした.呼ばれた右の男ファロン(エドモンド・オブライエン)は大学出のいい男が八度もムショ暮らしで惚けてしまう.これからは釣りをしてのんびり暮らすと休暇を喜ぶがエヴァンスから休暇を取り消される.コーディーから盗んだ金の行くへを訊きだしてくれと言う.どうもヨーロッパに闇ドルとして売り出されているようでその小売人を捕まえたいという.ファロンは刑務所に潜入して情報を撮る捜査官なのである.エヴァンスは彼への説明で、コーディーは父親が精神病で死に兄も同じ、本人が子供の時母親の関心を惹こうと頭痛の振りをしたら長じてその頭痛が本物になり母親だけを頼りにしている.母親がいなかったら病院暮らしだろうという.

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潜入するに当たってこれまで捜査で顔を見られている囚人は他に移送しなくてはならない.と全員の顔写真を見て知っているのは除外していく.その最後にこの写真があった.エヴァンスはこれは君が入る前日出所だから大丈夫という.

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これは刑務所の高い塀.

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次に俯瞰で中庭にたむろす囚人達が映される.この映画、先ず全体像を映すというショットが律儀に後二回繰り返される.

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壁に凭れる潜入したファロンは足下のコーディーに何とか信頼を得るように近づこうとするが、初回は、お前は不快なことをしていないが得体の知れない奴だとけんもほろろである

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次は、新規入所者の注射である.コーディーの横の助手を務めている囚人にエドに面会に来るように言えと命令する.この囚人は明日出獄である.昨日出獄予定が病気で伸びたのだという.

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同じ列に並ぶファロンはこの男を見てぎょっとする.あの最後に見た写真の囚人なのである.その男がいるので中々前に進まないでいたら後ろから押してきて注射が怖いのかと言われる.それが幸いした.

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その後ろの男を殴り飛ばして大乱闘を演じて独房行きとなる.これでばれずに済んだのである.こうした演出、脚本がこの映画は実にしっかりしている.この後、ファロンが如何にしてコーディーの信頼を勝ち取るか、その過程が非常に上手く作ってある.この一件も殴り合いを見ていたコーディーもまんざらではない顔をしていた.

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扨、娑婆では肝っ玉母さんが部下を指揮して仕事の段取りを取っている.それが三つのショットに分割される.最初は彼女一人.

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次は四人が入る大きさで、母親の右側がエドである.

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三つ目のショットではヴァーナが入る.エドの隣にいるのである.母親はエドに向かって分け前はコーディーの分もあるからなというと、エドも逆らわない.それを見てヴァーナは出ていく.そして集会は解散である.

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エドがヴァーナを追って来ると彼女は怒っている.口先だけでコーディーが怖いのだろうと詰ると、彼はそう慌てるな、先ずコーディーを始末してからでも良いだろうと、刑務所に刺客を送ってあることをほのめかす.

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そこで二人は熱い接吻を交わすが、当時の映画だと性的場面ではキャメラはどいてあらぬ方向を映すが、カメラがスーと右に横移動し出す.まさか口吻ぐらいでそれはないだろうと思っていると、

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横移動して奥の窓が映って母親が二人の様子を窺っている.この横移動にも驚かされた.

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そしてもちろんこの次は壁の中である.刑務所の冒頭と同様今度は所内の作業場が俯瞰で映される.

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一人の囚人が上を見ながら何かのレバーを握っている.

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ものをつり上げ移動するものらしく大きな滑車が天井伝いに下で働くコーディーの真上に近づいてくる.彼はエドの差し向けた刺客なのである.この様子を、ファロンは見ていた.

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滑車が落下してコーディーの頭を潰す寸前にファロンが飛びつき彼を救う.俺を救って勲章も欲しかったのかとまだコーディーは心を許さない.

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その後コーディーに面会がある.母親である.エドがヴァーナと逃げたという知らせである.コーディーはここを出たら奴を殺してやると云うが母親は私が殺すといい、エドには叶わないから止めろと必死に止めるが聞く耳持たずに行ってしまった.

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面会室から作業場に戻ると、彼は頭を抱えて倒れ込む.何時もの発作が出たのである.すぐにファロンが気付き母親のしたのと全く同じに首筋をもみほぐし、彼に憧れていたといい、その様子を気付かれないように作業台の下に彼を隠し、弱みを他の奴らに見せては駄目だと母親と同じ事をいうものだから、ファロンへの信頼が一気に出来てしまう.信頼を勝ち取るまでの過程が段階を経て上手く出来ているだけではなく、一つの事柄でその過程の一段階と娑婆での話が一遍に語れるという巧さである.彼は今母親が危ないという事情を率直に話すようになり、脱獄するというので、その手順はファロンが考えてやる.

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今度はファロンへの面会である.この女性は彼の妻役の捜査官でこれが初対面である.エヴァンスに今度の連絡役はまた母親かと訊くと今度は妻だというのでブロンドにしてくれと注文をつけておいた.その女性が決まったら写真が来ることになっていた.生憎注射騒ぎで独房にいるとき写真は届いた.コーディー達はこれを飾って皆で見ようと机の上に出していたが、独房から帰った彼は気付かない.コーディーにお前独房で目が悪くなったのかといわれ中味のない封筒を見てやっと気付いたのである.開口一番ブロンドをこんな色に染めやがって、帰ったらすぐ元に戻すであった.彼女には脱獄の手はずを教え、電波を発信するようにするからと後のことを託す.個人的にこんな美人この画面一つでしか使わないのは何とも勿体ない.

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扨また俯瞰で今度は食堂である.以下の YouTube を見るとこの画面だけが見られる.

YouTube - White Heat (1949) - Cody's mother is dead

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食卓に着く前ファロンはコーディーに今日だと口の動きで知らせる.コーディーも口を動かし同じ言葉を口を動かし返してくる.席に着いてからコーディーは数人隔てた向こうにいるのが新しく入ってきた仲間だと知って、一人一人伝言ゲームのように耳打ちして母親の安否を尋ねる.帰って来た答えは死んだである.途端にコーディーの表情は変わる.

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悲痛な叫びを上げ机に乗るが何度も転び机から降りると取り押さえに来た看守を何人も殴り倒し大立ち廻りの末取り押さえられる.

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彼は拘束服を着せられベッドに寝かされ食事も取らない.精神科の医者が呼ばれる.何食か抜いた後、腹が減ったというと医者はよい兆候だと食べさせるようにいう.こんな格好で食えるかというので許可され食事を持ってきた囚人が拘束服を脱がせてやりおまけにピストルを渡す.そして、医者や知らずに来た看守を人質に、ファロンを含め数人の囚人を呼ばせて脱獄である.

コーディーを殺せなかったばかりではなく脱獄したのでエドとヴァーナは戦々恐々としている.戸にはベルをつけエドはこうなったら迎え撃つしかないと腹を括ったが、ヴァーナは逃げたい.併しもし逃げたらお前が母親を後ろから撃って殺したと云ってやると脅されて逃げられない.それでも隙を見て窓から出て来たらコーディーに捕まる.

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最早観念してエドが待ち構えていると知らせ彼を窓から家に入れ、彼の部屋まで行き彼に抱きつくがコーディーはそこまで来ているのが見える.コーディーがエドに声を掛けたところでさっと彼から離れる.エドは咄嗟に部屋を出るが扉の上から銃弾を浴び階段の上で倒れた.死体はコーディーに蹴られて階段を転げ落ちる.

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ヴァーナは怖くてしようがないので酒を飲んではこうしてコーディーに甘える.ファロンはヴァーナがラジオが鳴らず音楽が聴けないといっていたのでラジオを直すと提案する.ラジオは買うから良いと言われるが、明日の仕事を前にしてどうせ眠れないからとやることにする.直るかどうかは解らないと念を押しておく.作業場から彼は電気に強いことは知らされている.明日の仕事はロングビーチの石油コンビナートで給料前の現金をごっそり盗むことである.ドルをヨーロッパに闇で売っている両替屋といわれている人物にも出会った.その男の持ってきた仕事である.

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ファロンはラジオなど直してはいなかった.電波発信機を作って車の下に取り付けていたのである.車はタンクローリーで、コーディーは仕事で一番難しいのは何かと部下達に訊くと進入だと答えが返ってきた.お袋にトロイの木馬の話を聞いたことがあるがそれをやるといって木馬ならずタンクローリーのタンクに穴を開け隠れて乗り込むのである.

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タンクローリーは順調に目的地を目指している.併し警察も彼らに接近している.途中のガソリンスタンドのトイレの鏡に電波を発信していることを警察に知らせてくれと書いた事が功を奏していたのである.進入は計画通りに上手くいって金も奪ったが警察が来てしまった.催涙弾を打ち込まれ外に出れば撃ち殺される.

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逃げ場を失い最後一人残ったコーディーは丸い石油タンクのてっぺんに逃げる.何発も銃弾を喰らいながらも戦い続けている.

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最後は、石油タンクが火を噴き俺は世界一だと叫んで壮絶な最期を遂げる.

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映画は見つめ合う視線を同時に捉えられないが、ラオール・ウォルシュはそれをどう処理しているかも注目したけれども、まるでそんなことは当たり前であろう.当たり前のことをとやかく言ってもしようがないだろうとばかりに、刑務所の面会シーンなどはひたすら切り返しショットで済ませていた.それにしてもテンポの良いぐいぐい引っ張っていく映画である.その強さはアクション・カッティングスで出来ている.それと、この映画では話の進行のさせ方の巧さが目に着いた.

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