viva cinema

トニー・スコット「アンストッパブル」を観る

BeauMale
2011.12.17

トニー・スコットの映画はこれで三本目である.「マイ・ボディガード (2004)」、「デジャヴ (2006)」に続いてこの「アンストッパブル (2010)」を観たのである.観たと云っても DVD ではあるが.この作家の映画はどれも気に入っている.何でも非常に正確にきっちり仕上げられる、優れた作家だと思う.既に芸術作品として認められている作品は大体 DVD は高いのであるが、この作品は 1000 円均一として宣伝が来たので買ったのである.ルノワールの「ゲームの規則」のように映画史上十本の中に入れても云い大傑作が 100 円以下であったのは驚いたが、映画の価値は市場では決まらない.そういえば、最初にトニー・スコットの DVD を Amazon で買ったらどっといわゆるアクション映画の宣伝が来た.併し彼の作品はそうした凡百の作品とは比べものにならない良質なものである.

尚、トニー・スコットは「エイリアン (1979)」や「ブレードランナー (1982)」の監督、リドリー・スコットの弟である.TV ドラマの「グッド・ワイフ」の総監督として二人の名が載っている.リドリー・スコットが BBC 出身であるのと同じに、トニー・スコットも TV のコマーシャル映画出身である.


この映画はある種家族の和解とでも云った枠組みで作品を囲っている.出だしの方に、母子が朝学校に出掛ける画面が出てくる.その後この画面である.これはバックミラーに映っているのである.

Hosted by Picasa

そして次のこのショットでそのことが解る.何故離れた場所から見ているのか、二人は彼、ウィル・コルソン(クリス・パイン)の妻子であろうがその理由は伏せられている.彼は直ぐ彼女に携帯をするが応えて貰えない.

Hosted by Picasa

クリス・パインは鉄道勤めは新しく就いた職場のようで、ベテラン運転手の集まる中、フランク・バーンズ(デンゼル・ワシントン)を探しに来る.

Hosted by Picasa

彼と組んで乗務するのである.クリス・パインはベテラン達に冷たい目を向けられているのに気付いて訊くと、ここは託児所の子供が来る所じゃない.会社はベテランを首にして託児所の餓鬼をよこすと文句を言われるが、ここは老人ホームかと思ったとすかさず言い返す.

Hosted by Picasa

扨、これが事の発端である.ある運転手が貨車を従えた汽車の場所を移動しようとしたらポイントが切り変わっていなくて、汽車は発車させたまま止めずに飛び降りポイントを切り替えようとしたが間に合わない.汽車は無人で行ってしまったのである.しかも 120 キロもの高速でである.

Hosted by Picasa

次はデンゼル・ワシントンの話である.これから機関車を発車させて貨物列車を繋ぐ場所まで行くのであるが、自宅に携帯を掛ける.彼には十八と十九の娘が二人いて姉娘の誕生日を忘れた言い訳である.

Hosted by Picasa

妹は出たが姉は怒って出ようとしない.この機関車に乗る車掌のクリス・パインも運転手のデンゼル・ワシントンの双方とも女性から電話に出て貰えないという事から始まるのである.そのような状況におかれてそれを回復するための一日がこの映画の枠組みである.

Hosted by Picasa

この日子供達の社会見学会として鉄道に大勢乗っていた.きっとこれはその子供達がどうなることかのはらはらどきどきで話は進むのかと思ってしまう.

Hosted by Picasa

暴走した貨車についての報告は直ぐさま管制室に伝えられる.管制室を取り仕切るのはこの女性、コニー・フーバー(ロザリオ・ドーソン)であり、彼女は有能で暴走する貨車の通過する踏切は全て封鎖するよう警察に依頼し、同じ線路上の汽車はポイントを切り替えて引き込み線にコースを変えるよう指示し、暴走車の積荷も調べさす.また、直ぐに人を派遣して、この暴走車自体を引き込み線に入れようとする.併し事は想像以上に深刻であった.積荷は毒性の強い化学物質を積んでいるし、ジーゼルエンジンの燃料も積んでいて、フルスピードで暴走を続けている.派遣した人物が切り替えのポイントに到着した時は既に列車は通過した後であった.彼にはこの先ずっと列車の追跡を命じる.このことが後で効いてくる.

Hosted by Picasa

デンゼル・ワシントンとクリス・パインの二人は雑談しながら機関車だけで貨車の待っているところに進む.そしてさしかかったところはスタントン大曲と呼ばれるところで、二人の機関車は下から上の川の方向に向かっているが、後々この機関車とは逆に暴走列車が上の方から進んで来るが、このカーブはスピードを落とさないと脱線して、右に並ぶ石油の貯蔵タンクに衝突すれば大惨事だという場所を予め見せている.こういう所がとても丁寧なのである.

Hosted by Picasa

また子供達の乗る列車に映像が戻ると、あろう事か正面から暴走列車がやってきた.このままでは正面衝突である.驚く運転手は身動きも出来ない.衝突の寸前に子供達の乗る列車は引き込み線に入って、難を逃れ、危険を認識していない子供達は驚き呆れるとともに大喜びである.この話はこれでおしまいで、単なる挿話に終わらせているのはこの監督の優れている点であろう.写真は子供達の乗る車両の前部から撮ってあって、線路の枝分かれが見えたら左に進んだところである.

Hosted by Picasa

暴走列車のもう一つのエピソード.警官が踏切の横断を阻止しているところに老人の運転するトラックが気付かずに突進してきて接触事故を起こす.競馬馬を運んでいたトラックが線路上に立ち往生で、そこに暴走列車が到来.やっと馬を降ろすが馬は興奮して云うことを聞かない.すんでの所で馬は無事であったが、線路上の車は一気に破壊してしまうショットでその凄まじさを語る.

Hosted by Picasa

まず最初の解決策が採られる.他の機関車を暴走機関車の前に繋ぎ減速させながら引き込み線に引き込むという作戦である.

Hosted by Picasa

併し連結に失敗して、繋ごうとした機関車だけが引き込み線に入ったが、減速できずに脱線横転して燃え上がってしまい、暴走列車は相変わらず大曲へと向けて暴走を続ける.

Hosted by Picasa

デンゼル・ワシントンとクリス・パインの二人も正面衝突しそうであったが、引き込み線に入って、最後の貨車一台を失っただけで難を逃れた.クリス・パインが間違って多く繋いでしまったのである.繋ぐ時に頻りに携帯が掛かってきてなんだか裁判の話をしているのだがそれに気を取られて間違えてしまった.

難を逃れて、デンゼル・ワシントンは別の解決策を考えつく.暴列走車の最後尾の貨車の連結器が開いていたので機関車だけで逆走して繋いで引っ張れば減速できるというアイデアである.それを管制室に提案するが会社本部の方で反対する.管制室のロザリオ・ドーソンは、もっと前に暴走車が市街地に入る前に強制的に脱線させることを提案していたが、会社は反対された.もう市街地に入った今になって強制脱線させるという.大曲で転覆するよりましだというのである.だから、勝手なことをやれば首だと脅かす.

Hosted by Picasa

デンゼル・ワシントンもクリス・パインも命令に従わない.脱線装置はあのスピードだと破壊されて効くはずないと主張する.デンゼル・ワシントンは既に首切りの対象になっているのでそんな脅しはびくともしない.その会話を聞いている、管制室のロザリオ・ドーソンはそれを男気だとにんまりする.

Hosted by Picasa

デンゼル・ワシントンは音声が途切れている振りをして会社との交渉は打ち切ってしまう.

Hosted by Picasa

脱線事故に備えて、街では避難が始まっている.この映画、列車のショット、管制室のショット、報道陣のショット、TV の画面のショットが交互に映されそのタイミングが非常によい.

Hosted by Picasa

予め云われていない対策が一つ実行された.警官が並んで発砲して燃料タンクからの給油を止めるボタンを打ってガス欠にしようというのである.しかし 120 キロのスピードのある列車の小さなボタンに当たるわけがない.

Hosted by Picasa

この映画では TV 画面がよく出てくるのだが、そこで列車の道筋が解ったり、次のように脱線装置とはどういうものかの解説が入ったりする.片側が高くなるような器具を線路につけるのである.

Hosted by Picasa

そのに脱線装置はまさにデンゼル・ワシントンの予告した通りに破壊され吹き飛ばされてしまった.

Hosted by Picasa

この映画冒頭で家族に電話に出てくれないという枠組みだと書いたが、それを解消しなkてはならないのである.今や解決策は、デンゼル・ワシントンとクリス・パインの双肩に掛かっている.二人の家族は父や夫の姿を TV 画面で見つめることになる.デンゼル・ワシントンの二人の娘も働いているファーストフードの店で父の活躍を見守っている.クリス・パインは謎の妻子との関係を長い話であると云って語らなかったのであるが、デンゼル・ワシントンは俺の短い話はと云って妻が四年前に癌で亡くなり二人の娘がいることをもっと前から話している.

Hosted by Picasa

長い話の方は、クリス・パインが友達の警察官と妻との関係を疑って警察官に銃を突きつけたことから妻との接見禁止措置を言い渡され、兄の許ににいるのだがその裁判の話で度々携帯が鳴ったのである.しかも妻を疑ったのは誤りであったと解っている.このままどうなるか解らない状態になってその話をしたのである.その妻子も TV 画面から離れない.

Hosted by Picasa

デンゼル・ワシントンは運転し、クリス・パインは機関車の後部に陣取って指示を与え、二度目の試みで繋がった.所がピンが刺さっていないというのでこの猛スピードの中連結部分まで降りて足でピンを刺したが足を負傷してしまう.

Hosted by Picasa

列車は一時減速できても暴走車に負けてしまう.そこでクリス・パインがブレーキを握り、デンゼル・ワシントンが暴走する貨車の各車両毎の手動ブレーキを掛けに行くことになる.

Hosted by Picasa

こうして何とか減速して最大の難所大曲は通り抜けられた.デンゼル・ワシントンは先頭の機関車まではたどり着けない.併しこのままでは何れ脱線する.そこに最初にポイント切り替えで派遣されその後暴走車をパトカーの先導で追っていた男が追いついてきた.クリス・パインに車の荷台に飛び移らせる.

Hosted by Picasa

そして、機関車まで追いつきまたクリス・パインが乗り移って汽車は止められた.これでめでたしめでたしである.これだったら最初からこの作戦を採ればよかったのにと思うが、一度ヘリコプターからロープで下りてという試みがなされたがそれは失敗していた.今は幾分でも減速できていたのであろう.

Hosted by Picasa

普通映画は事がなされた後の感慨は映さずさっさと終わってしまう.子供の頃は何でもう一寸やってくれないのかと思ったが、大人になれば映画はそれがよいと思うようになった.併しこの映画は、家族の和解や、下のように管制室とのやりとりでお互い顔を見たことがなかった出会いも入っている.筆者はない方が良いと思うが.

Hosted by Picasa

ということでこの映画は出来がよい.物語の展開が一寸先も見えずぐいぐい引っ張っていく力がある.全体的にグリーンをベースにした色彩で彩られている.

top