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「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」を観に行った

BeauMale
2011.11.6

「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」はドキュッメンタリーであり、ミシェル・オゼとピーター・レイモントという二人の監督の名が載っているが他に作品を残していず、見に行く最初から映画としての作品には関心がなかった.観ると出だしにヘリコプター撮影で紅葉の美しい森と川か湖かが映され、グレン・グールドに扮した俳優が帽子を目深に被って厚着をして歩む様子が映されるが、この森を散策するグレン・グールドの映像は場所を変えて何度か出てくる.実際の撮影というのはそれを含めて殆ど無く、昔のフィルムや写真を繋いで、現在の人に語らせるというありきたりのドキュメンタリーであった.

カナダでの音楽学校時代のことをガールフレンドが語り彼も彼女も習っていたピアノの教師の弾き方が指をそれぞれ独立したものとして撥ねるように鍵盤を打つやり方をその教師はやっていて弟子は皆その奏法で弾いたがグールドはずば抜けてその奏法で何でもこなすという話があった.彼が真似たのはその先生のピアノの椅子で極度に低い椅子を使って、彼ははその後特製の低い椅子を演奏会には持参するようになったが、偶々椅子を持って行かないときは椅子の足を切らせた、その切る役目は同行の父親に任され、その度に椅子代を払って引き取ることになったという.この映画ではないが演奏会の間中椅子の高さを直していてとうとう最後までピアノに触れることはなかったという話は聞いた.演奏会のキャンセルは常習犯であったとこの映画でも語られている.

カナダでは知られていたが、世界で知られるのはニューヨークでデビューしてからで、この辺りの話は以前見たドキュメンタリーから取られいた.レコード会社にタクシーで行くとその運転手から、どこから来たのだと尋ねられてカナダの山奥のどこそこだと応えると、運転手はアメリカだったらさしずめどこそこといった所だろうな、それで何だってレコード会社に行くのだと訊かれて、音楽家だと応えると、どんな音楽だ、クラシックかジャズかポップスかと訊いてくる.クラシックだと応えると、きっとお上品な人たち相手なのだろうといわれてタクシーを降りる.

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この白黒のドキュメンタリーは非情に面白かったのでもっと入れてくれたら良かったと思う.ピアノ店に入ってピアノをどんどん開けては弾いてみてこれはベートーヴェン向きだとそれぞれ品定めをしたり、録音最中にマネージャーが録音室で雑談していて、こっちは黙っていても彼はどんどん稼いでくれるからと冗談を言うところとか映っていた.併しこの映画にはそれらは収録されていなかった.レコード会社は即座に契約である.

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最初の曲は会社はバッハのインヴェンションを望んだが、グールドはゴルトベルク変奏曲を弾くと云って妥協しない.折れたのは会社側である.それが世界的大ベストセラーになり彼の名は世界的に有名になる.グールドはピアのは母親に習い母親はお曲を口ずさみながら教えたので、弾きながら歌う彼の癖はその影響なのだという.さっきのドキュメンタリーでは録音技師がその歌声を技術的に消している話が載っていたが完全には消し去ることは出来ず残っている.筆者も夜一人で静かにゴールドベルクを聴いていて人の囁く声に飛び上がるほど驚かされること度々である.

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グールドは非社交的であったが、人付き合いが悪いと云うことではない.人と群れて何かすると云うことには加わらないし誰かとつるむということもなかったが、スポーツが嫌いだったわけでもないと音楽学校時代のガールフレンドは語っている.ある時学校までモーターボートを自分で運転してきて、大声で歌いながら片腕で指揮のまねごとをしていたが、時にはボートのハンドルから両手を放して指揮をしていることもあったと回想している.

あるカメラマンが撮影に来てその様子が映されていたが、撮影を煩がったり嫌がったりせずカメラマンが撮っている間、カメラを意識せず全く自然に練習をしていて、下はカメラマンが一番良い写真だといったものである.

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また下のように何かに扮装して人を喜ばせると云うことも良くあったのだそうである.レコード会社は彼の奇行を宣伝に使ったが、その意味を承知していたし気に掛けることもなかったという.

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作曲家の ルーカス・フォス の妻で画家のコーネリアは二人の子供を連れてグレングールドの許に来てしまう.お互いに好きあっていたのである.その当時グールドは演奏活動を止めてしてしまいラジオやデジタル録音に夢中になっていて、彼としては一番幸せな時期だったのかも知れない.併し彼は病気を恐れ沢山の薬を服用していて非道い偏執狂に陥り、この映画で初めて見たがこの頃のグールドは後頭部が禿げ上がっていて別人のように見える.その偏執狂の余り彼女に絵を描くのまで禁じてしまって、彼女を呼び戻したいと思っている夫の許に再び戻る.一度だけグールドは言い出さなかったが彼女を連れ戻しにやってきてそれが永遠の別れでであったと語る.

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彼女がいなくなってこのソプラノ歌手と親しくなる.現代音楽っぽい曲を彼が伴奏して彼女が歌う映像があった.この曲はまた聴きたいが最後のタイトルを観ていたが曲名は解らなかった.リヒアルト・シュトラウスかヒンデミットの歌曲だと思う.これだと思う CD を見つけたが高いので買うのは保留である.

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1981 年にゴールドベルクを再録音して、筆者はデビュー版よりもっと飛んでおるこっちの方が好きなのだがそれが少し流れた.その翌年脳卒中で倒れて彼は死ぬ.齢五十という若さである.葬儀はトロント一の大きい教会で行われたが葬儀の最後に彼がピアノを弾くときの歌声が聞こえたのだそうである.その声に皆涙したという.筆者だったらぞっとして飛び上がるところであるが.

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