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加藤泰「「緋牡丹博徒 お竜参上」は唯々美しい

BeauMale
2012.7.9

この DVD は買ってあったのに観ていなかった.劇場で観たのかどうかははっきりしない加藤泰の「緋牡丹博徒 お竜参上 (1970)」である. 藤純子、菅原文太、嵐勘十郎・若山富三郎、山城新伍というそうそうたる俳優が出演している.

YouTube - 緋牡丹博徒 お竜参上 予告編


これは最初のタイトルの前東映のトレードマークと打ち寄せる波のシーンの直後に始まるシーンである.未だ何が起きるのか全く解らない時にこの映像である.いきなり掌が手前に向かって差し出されて切り替えされその手が富司純子の顔を包みその顔を確認していくように触れていく.切り替えされるとその手は一人の娘のもので盲目なのかと思うと顔がほころんで目を開く.ここに来てやっと富司純子が蒲団の上に座る娘と対峙していること解る.娘に財布を渡して部屋を出る時彼女の素足の足下から縦の構図で奥の感に堪えないという様子で財布を見詰める娘が映される.

緋牡丹博徒 お竜参上 Hosted by Picasa

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賭博場で富司純子の手並み見ていた菅原文太はそれをもう一度見せてくれと金を支払って富司純子に頼むと、富司純子は承知してそれに挑む.

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賭博場の場面はそこまでで勝負がどうなったかを描かず、いきなりこのローアングルである.地面より低いところからのローアングルは加藤泰ぐらいしか撮らないであろう.ローアングルで待ち構えているところに二人は連れだってやって来て、

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そしてアップになる.この画面も素晴らしい.富司純子はある娘を捜していて、いるという知らせで来たが違っていたと、これが冒頭の娘であった.菅原文太は浅草にそういう娘がいると聞いたことがあるという話をする.

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時が経って浅草に富司純子は現れる.彼女から掏摸をした娘がいたが奪った財布を取り返すが直ぐ放してやる.その娘ある組のものに捕まって右手の中指を潰される.その娘に恋をしている同じ組の組員は彼女を助けるが、嵐寛寿郎の組は大流行の芝居小屋を持っていて、そこでも掏摸が頻繁に起こり捕まった掏摸達は嵐寛寿郎の前に連れてこられ中指切断を言い渡される.嵐寛寿郎の許には富司純子が客人として滞在中でその娘は子供の頃も目であったことを聞きつけもしや彼女の探している娘ではと、嫌がる娘に目隠しをして自分の顔を触らせる.冒頭の娘のしたことの再現である.

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.娘は嵐寛寿郎の養女にして彼女を好いている男と結婚させることになる.嵐寛寿郎、富司純子、その娘の三人が舞台上を見詰めるシーンが切り替えされて、

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舞台上で稽古をする役者がロングで映される.こうしたところは本当に美しい.

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富司純子がやっと出会えた君子(山岸映子)は嵐勘十郎の養女になり好いている男と結婚することになったがその男は別の組の組員でありその組は嵐勘十郎の組を潰して劇場を乗っ取りたい.巡業に芝居小屋を貸してくれと頼んだが断られた.そこで君子の好きな組員を拷問して君子に権利書と印鑑を盗ませる.その事に嵐勘十郎も富司純子も気付くが黙って持って行かせる.まんまと盗んできたことを喜ぶ親分と子分達であるが、

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そこに富司純子が乗り込んできた.盗んだものを返さないと警察に訴えるというが、そんんことすれば犯人は嵐勘十郎の養女で恥となるだろうというので富司純子は事を荒立てたくない、この件は盆の上で決着したいと申し出る.これは富司純子が単身乗り込んできて仁義を切るところであるその様子がこのように深い縦の構図で表されてこのシーンは素晴らしい.

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扨、勝負は賽子の一本勝負となるが賽を振る男が別の賽を隠し持っているところを富司純子は見破っている.

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富司純子は男の腕をねじ上げて手を見ると賽は既に手の中にはないが天井にくっついているのが映って簪を投げ賽子を手に取りそれが仕掛けのあるものだと見破って権利書と印鑑は取り戻しこの件は落着である.

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次にまた問題が起きる.菅原文太が東京にやってきてそこの組員の右手を切り落としたのである.そのシーンは全く映されない.菅原文太は嵐勘十郎の許にいるが彼としては迷惑が掛かると出て行きたがるが嵐勘十郎は引き留め、引き渡しを要求する彼らに応対して断っているが、彼らは、それ以上はせずにこれを口実に一気に組と浅草の支配権を奪おうと目論んでいる.菅原文太と富司純子はその様子を奥で聞いている.その様子がこのように障子の窓から見えるのはこれまた素晴らしい.

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このシーンは最初に 浅草凌雲閣 の全体像が映され、次いで君子が現れ、好いた男の許に歩み寄る.ここのロングショットも素晴らしい.男は組同士が戦争状態であるからと別れを告げる.

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組同士の戦争はこれは菅原文太と富司純子が示し合わせたようであるが、菅原文太が自分を追っている組に単身乗り込み相手を挑発する.親分は挑発に乗るなと止めるが子分達はいきり立って逃げる菅原文太を追って戦闘状態になり闘おうとするが、ピストル片手に富司純子も加わり彼を助け大した戦闘もないままに警官が駆けつけ、相手側の親分の思惑のように口実を付けて一気に嵐勘十郎の組を潰すという目論見は外れ、警官の見張りが厳重で何も出来なくなる.

この一件もこうして片付いて菅原文太は国に帰ることになり富司純子は雪の中橋の上で彼を見送るこのシーンは絵のようである.

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富司純子は彼に帰りの汽車で食べてくれと弁当を渡すと蜜柑が一つ落ちてそれが転がり富司純子が追って拾うのにしゃがみ込むと菅原文太もしゃがみ込む.そして二人が立ち上がると菅原文太は手前の方へと去っていくのである.この映画ヤクザ映画であるのに戦いは少なくあってもそれは映さず何とも慎ましく映像の美しさのみを追求している.

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嵐勘十郎の劇場の座付き役者はもっと前に練習光景が出ていたが、相手役の女役者が気に入っていなく君子に目を付け彼女は一躍評判の役者になる.一方降ろされた女役者は当然不満があるわけでそれを芝居小屋も浅草も手に入れたがっている組は見逃さずこの小屋は俺たちのものになるが云う通りにしたらお前は主演に返り咲くと唆し、嵐勘十郎を連れ出させる.

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人気のない変なところに連れて来て一体何だと云ったときは遅かった.待ち伏せしていた敵方の組員が次々に襲いかかり多勢に無勢、とても防ぎきれない.

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瀕死の重傷を負った嵐勘十郎は自宅に運び込まれるが虫の息ではやる子分達に喧嘩は駄目だという.

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富司純子も枕元でそれを聞き復讐などしては浅草六区の芝居小屋に通うお客に済まないというのが彼の遺言と、いきり立つ子分達を抑え、挑発には乗らない.

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そこで手打ち式が行われるが相手はそれを利用してし興行会社を作ったので芝居小屋を暫く預からせろと云う話になるが出席していた富司純子が猛反発してそのような理に合わないことが出来るはずがない.親分を殺されてそれでもこうして暴力沙汰にはせず手打ちを行っているのに余りにも理不尽だというと、相手側の子分が彼女に襲いかかってくる.そこの思わぬ助っ人が現れる.若山富三郎である.彼は富司純子と兄妹の杯を交わした仲で滅法強く、相手の親分の片手の指を拳銃で飛ばして尚ももう片方の指を詰めさせる.若山富三郎の役はかなり喜劇的な役回りである.

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この件が片付いたらいきなりこういうロングショットで遠くの馬車で人声が聞こえる.

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近づいたキャメラには馬車に乗った若山富三郎の妹が駆けてくる彼を急がせて馬車に乗れと云う.富司純子も居合わせ、若山富三郎達兄妹がこれから上海に行くという話しを聞くが若山富三郎は富司純子に夢中で行かないと言い出すが、富司純子は二人を行かせる.そして馬車が疾走するシーンが後ろから映されるが止まった馬車を御していたのは富司純子だけであった.日本映画で女性が馬車を御すなどと云うのは見たことがない.

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馬車を御す富司純子が急に止まって降りると君子の恋人が襲ってきた.襲ってきたのは彼一人ではなく他の子分達も大勢が襲ってきた.

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その親分の家には座長の役者と君子が囚われ役者を幾ら殴っても彼らの所で芝居をするのを断るので拷問は君子に向かう.彼女の太ももに煙草の火を押し当てたり、目を潰すとまで云う.そこに君子の恋人が富司純子と闘っているはずが戻って来て、拷問を止めようとする.

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併し彼には勝ち目がない.親分に背いたと散々いたぶられ階段を転げ落ちる.

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捉えられている君子が上から手を差し伸ばしあと少しで手が届くところまで階段を這い上がるが力尽きてしまう.

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人質の命に関わるので死んだ嵐勘十郎の子分は権利書と印鑑を持ってきて最早これまでと判子を突こうとする.その時屋根で音がする.

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富司純子は馬車を御して駆けつけ屋根に飛び乗る.そして、拳銃を構えて二階から踏み込み全員を解放する.勝負は親分と一対一での差しの勝負で真夜中に凌雲閣で付けることになる.

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主演役者と君子が舞台にいるのを見ていると富司純子に手紙が届く.その内容は明かされないが、

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次のシーンは、橋の上で待つ菅原文太である.

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太鼓橋のように緩いカーブが付いている向こうから現れたのは富司純子である.

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二人は挨拶して、菅原文太はこれから富司純子が一人で戦いに行く事を知っていて助っ人を申し出るが彼女は断る.それでは折角であった君子がまた残されて一人になるじゃないかと云うが富司純子の決意は固い.

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ここで超アップで富司純子が映され、

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切り替えされて菅原文太の超アップである.菅原文太はそれでは骨を拾いに行くといって二人の道行きで凌雲閣に到着する.

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中に入ると親分が出て来たが約束に違えて相手は一人ではない.入り口を閉じ多くの子分達に取り囲まれる.富司純子はあくまでも親分に勝負を挑みそれを邪魔する相手を菅原文太が倒す.結局彼女は相手を倒し相手は凌雲閣から落下する.

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そこに大勢の敵と戦い傷を受け返り血で血だらけの菅原文太がやってくる.

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傷ついた二人は這うように歩み寄り、後の決着は自分が付けるからと菅原文太は言い残して立ち去る.

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夜空に凌雲閣が浮かび芝居小屋の登りのはためくシーンを挟んで、黒地に「完」の文字が白く浮かび映画は終わる.

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この映画は審美的にのみ撮られた映画のようである.悪役の方の親分の忍耐強さでこの話は常に事態は先延ばしされる.戦いの場面も博打の画面も常に抑えられ、富司純子と菅原文太の二人をのみ描きたかったという映画だと思う.

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