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アベル・ガンス「ナポレオン」後半

BeauMale
2011.9.5

アベル・ガンスの「ナポレオン」は 1927 年の作品でサイレント映画である.ナポレオンのイタリア戦線まで扱った大スペクタル映画であるとともにある種フランス革命についての啓蒙的映画でもある.前後二時間ずつに別れた四時間の映画である. 昨日観たのはその後半である.前半はナポレオンの幼年学校時代から始まって雪合戦の場面しか覚えていない.後半はフランス革命でジャコバン派が権力を握った時期からで、マラーの暗殺から始まり、ダントンが処刑されロベスピエールとサン・ジュストが支配する.革命派で一番の美男子サン・ジュストを監督のアベル・カンス自身が演じている.時は移りロベスピエール、サン・ジュスト達は排除されて処刑される.ロベスピエールが権力を失う瞬間、演説しようといてヤジと実力で排除されて顎の骨を折られると昔読んだことがあるが、そういう暴力は描かれていなかった.ロベスピエールが演台から追い立てられた後、サン・ジュストがこれまでの特権階級に虐げられた奴隷の身を忘れたのかと演説しだして拍手喝采、そうはならないのに、シェークスピア-の「ジュリアス・シーザー」でシーザーの暗殺後ブルータスが独裁者を倒したと演説した後に、アントニーがシーザーの恩を忘れたのかと演説して世論の方向を逆転するのではと思ってしまった.下の写真は、王党派がパリに迫っているのでナポレオンがパリ防衛軍の総司令官に任命され、議会を武装化する為に議場にやってきたときのである.人権宣言の大きなポスターの前にナポレオンが来てその陰が人権宣言に映るといったこれ見よがしの演出もある.

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この映画で驚かされるのは人の多さである.議場でも街中でも群衆が溢れんばかりに出てくる.下の写真は議場にやってきたナポレオンを歓迎する人々である.群衆の顔が識別できるほどにキャメラが接近すると、ブリューゲルの絵のような印象をうける.

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ジャコバン派が一掃された後は世の中は華美になってそこら中で舞踏会が開かれ、パリを救ったナポレオンも人気者である.そうした舞踏会で知り合った、マルティニャック生まれのジョセフィーヌにナポレオンは恋い焦がれて言い寄っているのが下の写真である.

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前々から立案していた北イタリアからオーストリア軍を撤退させるイタリア戦争がナポレオンを総司令官として執行されることになって、その前にナポレオンはジョセフィーヌと結婚することになるが、既にフランスは結婚は役所で行われることになっていてそこに花嫁と数人の立会人を待たせて作戦に夢中になっていて、部下に言われて思い出してやっとたどり着くという挿話が入る.昔読んだ本ではナポレオンの許には陳情者が沢山やってきて、中には色仕掛けで迫るご婦人も多く、寝室で待たせているが仕事に没頭して待たせているのを忘れてしまうとか、当時の下着は何もかも紐で結んでいてそれを解くのが時間の無駄だと云って先に裸になって待ってろと云っていたのに忘れてしまうという話を読んだ.無論そんな場面はこの映画にはない.映画の最後、全軍集合で画面が三分割される.キャメラを三つ並べて撮ったのか、映写はそれぞれ別の映写機で上映されているようである.画面が繋がっているとき、別々の画面を映しているとき、一つの画面の手前で馬が三つの画面をまたいで進んで行くとかの実験的な画面になる.三分割で終わるこの映画の最後は、左からブルー、白黒、赤となって三食器で終わる.この映画は随所でその画面が三種類のどれかの色で出来ていて無いようにリズムを与えている.

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もっと前の方であるが戦場に赴くナポレオンの一行が馬車と馬で疾走するのであるが、並木の左右の木が後方に退く、まさに疾走する馬と馬車を前方から取っているところがあるが、当時の車は馬より速く走っていたのだと思わず思う.疾走する一行を真横からずっと同じ早さで取っていたりもする.この映画は大昔に観たときはそれほど感心しなかったが今観ると面白くてしようがない.

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