viva cinema

アキ・カウリスマキ 「過去のない男」を観て

BeauMale
2011.9.16

昨日はアキ・カウリスマキというフィンランドの監督の「過去のない男 (2002)」を観る.この監督の映画は荒唐無稽の自由の女神の鼻を盗んでくるといった話も面白いが、悲惨きわまりない、「マッチ工場の少女(1990)」といった映画も大好きである.悲惨きわまりなくてもちっともそれを感じないのである.昨日観た「過去のない男」も悲惨きわまりない話なのである.ある男が夜行列車でとある街に午前四時頃到着すると行く当てもなくベンチで寝てしまう.

Hosted by Picasa

そこを三人のギャングがやってきて寝ている男の頭を棒で叩いて、その後も三人でぼこぼこに殴ったり蹴ったりで持ち物をすべて奪って行く.次は手持ちキャメラになって何を映しているのかと思ったら、男の視線になって、駅に行き、その間キャメラに映る人々の表情から怖いものを見ているということが解り誰もが隠れたりよけたりする様子が映され、結局トイレで倒れ、病院に運ばれるが、心停止で死亡が宣告されシーツが頭まで被せられる.所が、病室に誰もいなくなると男はがばっと立ち上がって、服を着て病院をあとにして、海辺で倒れているところを二人の男この子に見つけられ彼らは父の所に知らせていく.

Hosted by Picasa

男のたちが父親の許に駆けだしたところでロングになりコンテナーを家にしている一家で、こう言うように時々ロングで映される画面が素晴らしい.クローズアップ、バストショット、ロングが実にタイミング良く切り替えられて、多くはバストショットで、二人の人物が話している場面であるが、その話し方がお互いに必要最低限にしか言葉を発しないと決意をしているかの如くで、二人ともにこりともしないのであるが、その中に時々ユーモアーが加えられて何とも可笑しい.

Hosted by Picasa

子供の家で母親に世話をされて、男は完全に記憶喪失となったことが知らされる.快復したある日そこの父親が今日は金曜だから食事に行こうと誘われついていけば野外で救世軍の給食であった.そこで出逢った救世軍の女性カティ・オウティネン演じる決して魅力的でもなく美人でもない女性に一目惚れする.

Hosted by Picasa

快復したので他に行かなくてはならないが、世話してくれた父親が、悪徳警官を紹介してくれて、警官はホームレスから「口頭の契約」でコンテナーを貸して金を取って、それは当局のあずかり知らぬ所である.

Hosted by Picasa

男は俄然頑張りだして電気を引きジュークボックスまで運び込み部屋は綺麗に片付ける.家賃は払えない文無しなので職安に行くが名前も住所もなしとなったら追い返されてしまい、一目惚れした、救世軍の女の尽力で、粗大ゴミ収集の仕事にありつき、服も救世軍から支給されて見ちがえるようになり、ある日彼女にキスまでしてしまう.

Hosted by Picasa

また、ある日救世軍を訪れると賛美歌ばかり演奏しているバンドが練習しているので、君たちはレパートリーを広げるべきだと云って、家にはロックやブルースのレコードがあるから聴きに来いと誘って、ジュークボックスで聴かせれば彼らは夢中になってしまう.このジュークボックスは彼女を呼んで食事をしたときもムードミュージックとなって二人の仲を強くする役にも立っている.

Hosted by Picasa

救世軍の上層部に話してこうした音楽もレパートリーに加えた方が人の集まりも良くなると交渉すればその幹部の女性は、私も若い頃は歌を歌っていたし、音楽が人を殺すようなことはないからねと、作戦は成功、幹部の女性自身がバンドのボーカルを担当する.その後人々の集まりは良くなって、ダンスパーティーのようになって行く.

Hosted by Picasa

男と一目惚れの女性は悪徳警官から車を借りてキノコ狩りのドライブまでして幸せの絶頂である.二人の姿が美しく眩しく輝いている.

Hosted by Picasa

ところがふとしったことから男は事件に巻き込まれ、記憶喪失者と新聞に載ってしまったら、本当の妻がそれを見つけて夫であると確認する.それで戻ることになるがその別れの晩に、今までは、ただまっすぐに歩き角をさっと垂直に曲がるといった歩き方をしていた一目惚れの女性は、今や恋人であり彼のコンテナーの前に本当に恋人同士のように双方から駆け寄って抱きつく.カウリスマキの登場人物は誰もが機械仕掛けの人形であるかのようにぶっきらぼうでそういう動作をするのだが、このシーンはそこから抜け出している.

Hosted by Picasa

ここで終われば悲恋物語だが、男は妻の元に戻ると、二人は仲は良くなく彼が離婚届を出して南の方に働きに行くと出たっきりだったと知らされる.妻には新しく恋人がいて、恋人から決闘だな、といわれるが無論その必要はなく、彼は元の場所へと戻って行く.悪徳警官まで彼には一目置いていて皆の歓迎の許恋人に会って映画は終了する.考えてみればどんなにこの男は悲惨な状況にいたのだと分かるがそれが全く感じられなくて至るところでクスクス笑いたくなる映画である.

top