viva cinema

クロード・シャブロル「いとこ同士」を観た

BeauMale
2012.1.29

クロード・シャブロルの「悪の華 (2003)」、「石の微笑 (2004)」と晩年の作品については既に書いた.晩年の作品は素晴らしい.特に「悪の華」がいい.初期のヌーヴェルヴァーグの到来を告げる作品はどんなであったか、実際、ヌーヴェルヴァーグの最初の作品はシャブロルの「美しきセルジュ (1957)」とこの「いとこ同志 (1959) Les Cousins」で、トリュフォーの「大人は判ってくれない (1959)」、ゴダールの「勝手にしやがれ (1959)」は制作年は同じでも「いとこ同士」が先に来た作品である.


田舎で母の手一つで育てられたシャルル(ジェラール・ブラン)が従兄弟のポール(ジャン・クロード・ブリアリ)のパリのアパルトマンにやってくる.大学のためである.母親はパリに出る事に反対したがポールの口添えでポールと一緒に住むならという条件で許したのである.

地下鉄の改札から画面は始まる.勝手の分からないタクシーに乗ってアパルトマンに着きエレベータで従兄弟ポールの部屋にやってきた.出迎えたのは学生ではないらしいポールの友達クロヴィス(クロード・セルヴァル)という男である.

Hosted by Picasa

部屋は中二階があってそこはポールの部屋である.彼はきざな髭を蓄え部屋ではガウンを着ていて、従兄弟のシャルルとは正反対に都会の喧噪を好む男である.そしてワグナー好きの女たらしでもある.

Hosted by Picasa

二人は抱き合って挨拶を交わす.

Hosted by Picasa

部屋を案内するといって先ずキャメラは彼の部屋である中二階や周囲の壁を映してシャルルのものとなる部屋に導く.ここで一つの伏線が張られている.一つの壁には何丁かの銃が飾られている.それとなく映されるが後々意味を持ってこよう.

Hosted by Picasa

二人がシャルルの部屋に行っている中に、電話が鳴りクロヴィスが出てポールを呼ぶと彼が部屋から出てくるところが縦の構図で映される.ポールの後ろの奥がシャルルの部屋である.

Hosted by Picasa

電話はポールのガールフレンドでこれから来るというのである.困った事が起きているのである.女が来るというと気を利かせたシャルルは部屋に戻り彼は毎日のように母親に手紙を書く.

Hosted by Picasa

女がやってきたが、彼女はポールによって妊娠させられているのである.クロヴィスはこういうときの後始末をやってくれる男である.ポールは彼女を慰めながらそれしかないと堕ろす事を勧め後ろからこっそりクロヴィスに金を渡す.

Hosted by Picasa

ポールは女たらしの遊び人であるが朝は何時も早い.翌朝シャルルを起こしに来た.壁にあった弾の入っていないピストルを耳元でかちかちやって起こすのである.これも伏線である.

Hosted by Picasa

ポールはシャルルをパリ見物へと誘い、街を車で疾走する.この辺りの疾走感はまさにヌーヴェルヴァーグならではである.

Hosted by Picasa

シャルルはパリに出て来た事の歓びを辺りを見回して見るもの全てに感激している.

Hosted by Picasa

ここのパリの街中の映像がこの映画で一番息づいているという印象を感じた.ゴダールの「勝手にしやがれ」は何処も取ってもそうだったのとは違う.

Hosted by Picasa

二人の行った先は学生がたむろすクラブであるものは酒を飲みあるものは女と抱き合いあるものはブリッジに興じている.そんな中シャルルは一人の女性に一目惚れしてポールに紹介を頼む.彼女の名はフローランス(ジュリエット・メニエル)である.その日はすぐ別れた.

Hosted by Picasa

翌日はシャルルの歓迎パーティーでアパルトマンには大勢の男女がやってきた.その中にフローランスがドレスアップして現れた.

Hosted by Picasa

勿論シャルルは飛んで行き彼女を独占する.二人はポールの中二階への階段に腰掛け語り合う.

Hosted by Picasa

パーティーの馬鹿騒ぎの喧噪を嫌って二人は外に出る.彼は彼女を愛していると告白してドライブに行く事にした.シャルルはポールの車を借りるので彼女を待たせて上に戻る.

Hosted by Picasa

所が部屋はらんちぎ騒ぎで皆酔って思い思いに大声を上げレコードのワグナーが聞こえている.シャルルはポールに車のキーを貸してくれというが聞いてやしない.やっとドライブという言葉が耳に入って、何を思ったのか全員で車で繰り出すと言い出した.

Hosted by Picasa

ここで大きなすれ違いが起きたのである.皆が出て来てフローランスは何がどうなっているか解らぬ儘にポールの車に乗り二人は離ればなれになってしまった.

Hosted by Picasa

戻ってから、らんちき騒ぎの時一人の客が持ち出した拳銃が置いてあるのを見てシャルルが弾が入って無くて良かったというと、弾がないとでも思っているのかとポールは実弾を見せてくれた.益々危険は増したのであるがこれは後の話.もう始発電車の出ている時間であった.二人はすぐに寝る.

Hosted by Picasa

翌朝シャルルはフローランスから電話が来ないか気にしているところに電話が鳴る.彼は飛びつくように受話器を取るとフローランスであった.その日の午後にデートする事になる.その事を嬉々としてポールにも告げる.

Hosted by Picasa

一体時間が何時なのか解らないがフローランスはバーのカウンターの後ろから掛けている.

Hosted by Picasa

そしてこのすれ違いが運命の分かれ目であった.ポールとの約束は五時であるのにフローランスは三時にやってきた.待ち合わせ場所も違っている.ポールは二時間待てと云って彼女を招き入れた.シャルルと付き合っても彼はガリ勉で、外にも出掛けないし彼の選ぶ本を読むだけの生活になるから止めろと頻りに彼女を説得しようとするが彼女は応じない.

Hosted by Picasa

そこにクロヴィスもやってきて彼女を説得しようとする.作戦を変えてお前は純真な彼をどうするつもりだ、彼とは肌の合うはずはない、お前の肌に合うのはこの男だと云ってポールに触らせる.これだけで心変わりは余り説得的とも思えないがシャブロルは女とはそうしたものだというのだから致し方ない.

Hosted by Picasa

二人は抱き合ってしまう.

Hosted by Picasa

一方シャルルは外で彼女を待っている.来るわけはないのに徒に待っていると友人達がやってきてシャルルも知っている女ともめていた友達が飛び降り自殺をして両足を折ったと云われる.これも結末を暗示させる伏線である.

Hosted by Picasa

このシーンが凄い.ポールのアパルトマンである.中二階の二人、ポールとフローランスは既に服は着てベッドシーンはないが、ポールは彼が帰ってきたようだと云い、ドアの音がするとシャルルが入ってきて中二階を見上げて、上にいるフローランスにそこで何をしているのだ、二時間も待っていたのだぞと声を掛ける.このシーンはこの映画で一番素晴らしいと思う.

Hosted by Picasa

そして二人がパーティーの日に腰掛けた階段を彼女が下りてきて彼がそれを迎える.そのほんの一瞬であるが階段を下りてくる彼女の素足が映る.「悪の華」で素足でエロティシズムを表現していると書いたが、それがこの長編二作目にあったというのは驚きである.シャブロルはベッドシーンはなくてもこれで充分だと云っているようである.降りてきて待たせた事をフローランスが詫びるので一瞬安心するが、話があるというポールの言葉にシャルルの顔は険しくなる.待っている中に...二人は同棲する、という言葉にフローランスはでも友達だと付け加える.シャルルは、恨まない、順番を待つという言葉でここは締めくられる.

Hosted by Picasa

言葉でそうは云っても現実はそうはいかない.朝食は彼女が作るが彼は愛想良く不味くてもいちゃつく二人の前で美味しいと云って食べる.

Hosted by Picasa

シャルルは心の平衡を保つためにひたすら勉強するが、踊っていた二人が部屋にやってきては一緒に踊ろうと云って邪魔をする.この無神経さはポールは理解できてもフローランスも何故そうするのか理解できない.

Hosted by Picasa

またあるときは、この場所が良く掴めないのだが、彼女が下履きだけの裸体をさらして差し込む光で日光浴をしているときに声を掛けられ愛想良く振る舞う.

Hosted by Picasa

このシーンはさり気なく入れられるが、シャルルが何か薬を飲んでいる.覚醒剤のようなものだと思うが、恐らくこれを入れないと最後の不自然さが説明できないからだったのではないかと思う.彼の後ろの波打って見えるのはシャワー室で、半透明の硝子は中が透けて見える.

Hosted by Picasa

シャワー室には彼の部屋からでないと入れないが、その度にシャルルの思いや如何にである.ある時二人がシャワーを浴びて何か言い争いをしている.

Hosted by Picasa

翌朝の食事にはフローランスの姿が見えない.ポールは彼女がいたときは楽しかったと語り、彼女の出ていった事が解る.ポールの試験まで後三日、シャルルの方はあと四日である.全く勉強していないポールはこの難局絶対に乗り切ると云っている.

Hosted by Picasa

ポールの言葉通りに彼は試験にパスした.何時ものクロヴィスに金をこっそり渡しているので色々試験で技術が使えるよう工作したのではないかと思われる.本人自身もカンニングしたと自慢そうに語っている.

Hosted by Picasa

試験を翌日に控えているシャルルの迷惑も顧みず一同を呼んで祝賀パーティーである.シャルルも呼ばれたが固持して部屋に閉じこもる.クロヴィスは祝いだと云ってキン肉マンの芸人を連れてきた.あるいはさっきの金はそのためかも知れない.

Hosted by Picasa

このパーティーにはフローランスも来ていてポールは横に行って肩を抱くがすり抜けてポールが見ていないのを確かめてシャルルの部屋にやってきた.扉を開けるとその扉に彼女の姿が映る.

Hosted by Picasa

彼はフローランスに無愛想に応対する.

Hosted by Picasa

彼が勉強を止めず相手にしてくれないので、勉強が本当に好きかと訊くとシャルルは吐き捨てるように選択の余地があるかと応える.彼女は執拗に彼に纏わり付いてくる.

Hosted by Picasa

これまで一度として怒りを見せた事がないシャルルが憤って、ポールとは違うのだ、明日の試験を失敗するわけにはいかない、興味は男だけか、顔を見たくもないといって戸口の方に押しやる.

Hosted by Picasa

そして出るときも入るときと同じに扉に姿が映る、

Hosted by Picasa

彼女ばかりではなく彼の姿も映る.このシーンの演出といいキャメラは素晴らしい.彼女は打ち萎れた様子でワグナーの「大学祝典序曲」が鳴り響き、芸人の演技に一同喝采する中、項垂れて壁沿いに真っ直ぐすーっと歩みを進める姿も素晴らしくそれをポールが目撃している.シャルルの部屋では彼女が出た後キャメラは部屋を猛スピードで一周する.

Hosted by Picasa

次のシーンは大学の正面が映される.

Hosted by Picasa

次いでシャルルが沈痛な顔つきで現れる.

Hosted by Picasa

キャメラは彼に寄って超アップで彼の顔をとらえる.この映画アップの画面はここしかない.

Hosted by Picasa

学友達がやってきてあれ程に勉強に打ち込んでいたシャルルが落ちる理由が分からないと口々に言うが彼は何も語らない.

Hosted by Picasa

この 1958 年当時教会に行く学生はどのくらいいたのだろうか、彼は教会の大きな扉を押すが夜は閉じているという張り紙がある.次に行きつけで気に入られている本屋の親父と言葉を交わすが通り一遍の慰め言葉ですぐ立ち去る.そして、あるカフェーにフローランスが男二人と話しているところを硝子越しに見る.彼女はそれに気付いて彼を真っ直ぐ見詰め返す.

Hosted by Picasa

シャルルは今生の別れとでも云うように彼女を見詰めている.彼女が一瞬眼を放すと彼の姿は無くなっていた.

Hosted by Picasa

その後セーヌに掛かる橋の上にやってきた.ここで飛び込むのかなと思ったがそんなはずはない.ピストルを何度も眼にしているのである.橋の上から勉強した紙を破いて川に捨て、学生証まで捨てて仕舞う.その後の行動が何処をどうやっていたか、時間緒経過を表すものは全くなく、いきなりアパルトマンに戻ったシャルルは壁のピストルを手に取る.

Hosted by Picasa

そして六連発の弾倉に弾丸を一つだけ装填して弾倉を回す.ポールの確率は六分の五だと云ってポールの部屋に行く.ロシアンルーレットである.

Hosted by Picasa

ぐっすり寝ているポールの頭目がけて引き金を引くが弾は発射されない.

Hosted by Picasa

後は部屋で自殺するのかと思ったらピストルを居間の椅子に置いて行ってしまう.部屋で机に向かって何かを書き出しその片腕だけが映っている.

Hosted by Picasa

その同じ姿勢で辺りが明るくなるのだが、彼は寝込んでいた.時間の経過が現されているとは見えない.ポールが起きていて朝帰りだというのだからかなり遅く帰ったはずである.カフェーでフローランスの姿を見たのは夜になったばかりの時刻であろう.時間の経過がサッパリ解らない.

Hosted by Picasa

居間には拳銃が昨晩の儘置いてある.

Hosted by Picasa

ポールは朝帰りでこれで二人とも悪になった、何処で祝宴を上げていたのだと彼はシャルルの落第を未だ知らなかった.落ちたと聞いて慰め、冗談を言いそしてピストルを採っていつものように彼に向けるとシャルルは慌てて止めるが間に合わなかった.

Hosted by Picasa

弾はシャルルに命中した.彼はドタンと倒れる.この間ずっとワグナーが鳴っている.

Hosted by Picasa

呆然としてピストル片手に座り込むポール.

Hosted by Picasa

最後のカメラは音源である蓄音機のレコードが終わってアームが戻った所で映画は終わる.

Hosted by Picasa

この映画遙か昔劇場で観たのだが最後は自殺したと思っていた.こういう結末だということは全く忘れていた.観た時もそうであるが「勝手にしやがれ」程には驚きは感じられなく、確かに幾つか眼を見張るシーンはあるが.ゴダールと違う資質にゴダールではないと云ってもしようがない.晩年の作品と比べて、伏線を張り巡らしていて一気に結末に向かうという構成は最初の時からだったのだと解った.

top