viva cinema

オーソン・ウェルズ「上海から来た女」の鏡の部屋

BeauMale
2011.9.19

昨日オーソン・ウェルズの「上海から来た女」を改めて最初から見直した.オーソン・ウェルズの作品は、「市民ケーン (1941)」、「偉大なるアンバーソン家の人々 (1942)」、「上海から来た女 (1947)」、「マクベス (1948)」、「オーソン・ウェルズの オセロ (1952)」、「秘められた過去 (1955)」、「黒い罠 (1958)」、「審判 (1963)」、「オーソン・ウェルズのフォルスタッフ (1966)」、「オーソン・ウェルズの フェイク (1975)」、とオムニバスの「オーソン・ウェルズ/イッツ・オール・トゥルー(1993)」の十一本しかない.その中、「上海から来た女」、「マクベス」、「秘められた過去」、「オーソン・ウェルズ/イッツ・オール・トゥルー」だけは観ていなくて、後はすべて劇場で観ている.その中で何といっても、「市民ケーン」、「偉大なるアンバーソン家の人々」及び「黒い罠」が飛び抜けて優れていると思う.一番好きな作品は「偉大なるアンバーソン家の人々 」であるが、最初の二本が飛び抜けていてと変な感じであるが、「市民ケーン」のモデルにした新聞王のハーストの差し金で国税庁から追われてハリウッドでは映画が撮れなくなって終うという不幸の所為である.俳優として稼ぐしかなかったが、あの「市民ケーン」のオーソン・ウェルズを使うことのやりにくさで多くの監督が嫌がったということを伝記で読んだ.オーソン・ウェルズも監督に口出しするから実際に撮りにくかったようである.

DVD ではあるが、長年見たいと思っていた「上海から来た女」をやっと見ることが出来たが、残念ながらこれは一寸期待はずれでもあった.最初のタイトル画面が最初の二本の RKO のピッピッピッピという電波が飛ぶ絵ではなくて、海の波間を船の上から撮った水面であってその上にタイトルが流れた.そういえば最初の二本の RKO 作品は俳優の一覧は出ずに最後に一人一人の顔が出てオーソン・ウェルズがナレーションで一人一人を紹介して、最後に My name is Orson Wells. とあの声で云うところはいつもぞくぞくしたけれども、「市民ケーン」もそうだったか、覚えていない.最初のタイトルの後、この船が橋ぎりぎりに潜って物語が始まる.

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舞台はニューヨークのセントラル/パークの近くで馬車で行く女を追って、ナレーションで、というかこれはオーソン・ウェルズが自分の身に起きたことを語るという枠組みになっているのだが、乗っている美女はリタ・ヘイワースで一目惚れのウェルズが馬車に近づき話しかけ煙草を差し出す.

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そして、オーソン・ウェルズ、何ともいい男であるが何故あんなことをしてしまったのかとナレーションは後悔が述べられる.その後直ぐに、公園内から悲鳴が聞こえてウェルズは二・三人のチンピラに捕まって悲鳴を上げる彼女を助ける.彼は腕っ節が強いのである.彼女は彼が船乗りだと知って自分の船で働いてくれと頼むが断る.彼女の夫は腕利きの弁護士で両足が悪くて両手に杖を持っている.

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翌朝、下の写真の夫の船で働かないかの誘いを受けるが断ったが、夫のおごりで酒に酔いつぶれた夫を船まで送ってそのまま雇われてしまう.

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船は豪華ヨットでカリブ海からパナマ運河を抜けてメキシコ沿岸からサンフランシスコへという航海である.その途中で乗り込んでくるのがこのジョージという夫の同僚だという男.この男が後の事件の元となる.

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この男がヨットに乗り込んでくるとき船の他の乗客は島に渡っていて、海に向かって並んだウェルズとジョージが話すところ、この切り返しが一人は背を向けその肩越しというのは他で見ただろうかと思う.

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この船旅の間の四人の話は実のところかなり退屈に感じて終った.事件はサンフランシスコに到着してから起きる.ジョージがウェルズに 5000 ドルで自分を殺せと持ちかける.その金で彼女と逃げれば良いという話である.殺すと云っても殺した振りだけで、彼は保険が掛かっているし、別れないという妻から別れられる.殺したという告白状にサインをするのが 5000 ドル、ウェルズは殺人罪にはならない.死体がなければ殺人事件は成立しないからだといって彼も承諾する.実際その通り決行するが彼女の夫の許で雲隠れしたはずのジョージの死体が見つかり、彼は裁判に掛けられ、夫が腕利きの弁護士なので彼の弁護をする.夫は裁判の過程でウェルズが妻が好きだということが解って有罪を望む.陪審員が入場したとき、ウェッズは夫が常備薬としていつも傍らに置く鎮痛剤を飲んでしまう.彼女からそれを飲んで自殺したいと思ったことがあると訊かされていた.薬を飲んだと解って法廷は大騒ぎ.彼は裁判長室に運ばれるが警備員を倒して逃げ出してしまう.リタ・ヘイワースは上海から来た女であるので中国人社会と関係があって彼を匿う手はずをする.彼は、営業していない遊園地に運ばれて鏡の部屋にやってくる.

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そこに彼女もやってくるが、ジョージを殺したのは彼女であると悟る.

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足の悪い夫もやってくる.どうしてここだと解ったかはどうでも良い.そんな説明はない.兎に角鏡の部屋に来たのである.

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そして、彼女と夫は双方ピストルを構えて打ち合いを始めて二人とも死んでしまう.

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この鏡の部屋の画面が凄い、もっと長いのかと思って見直したらほんの一瞬に決着がついてしまう.何枚もの鏡の中から双方が何発も銃弾を発射して鏡が砕けひびが入る.最後は割れた硝子の断片の中に二人が横たわっている.彼女は彼に助けを求めるが彼は何も応えずに立ち去る.この映画はこのシーンのためだけに出来たのではないのかと思う.

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