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ジャック・ドワイヨン「ラ・ピラート」死ぬのは誰か

BeauMale
2011.10.23

昔劇場に通って観たのとは違って DVD で観るとあれほどの魂の悲惨だがそれほどにも迫ってこなかった.矢張り映画は DVD で観たんでは駄目だということがよく解る.絵画を画集で見るのと本物を観るのとの違い以上に隔たりはある.だから DVD でしか観たことのない映画は観たことにはならない.観た後に無性に劇場で観たいという思いが募ってきた.DVD でさえジャック・ドワイヨンの映画は売っていないので劇場で観るのはかなり絶望的であるが.

最初の画面、闇の通りに一台の車がこちらを向いて止まって、中に人が二人いるのが見える.運転席にいるのは大人の女性で助手席には子供の女性がいる.

昔むかし 小人が魔法の国に住んでいた
太陽に恵まれ
森や川にも獲物はいて
幸せに暮らしていました
ある時 巨人のゾムがやって来た

上の言葉はその少女から発せられるのだと思うがはっきりしない.途中で煙草が欲しいという女性の声で少女が口に煙草をくわえて火をつけてから女性に渡すとき言葉が途切れる.

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画面が切り替わって、縦の構図で奥から別の車が手前の二人の乗った車に近づいてくる.この映画は縦の構図が多用される.舞台がホテルであったり船であったりするのでその通路が縦の構図になる.舞台をそういう場所を選んでいるのだから縦の構図を意識的に選んでいるのだと思う.スクリーンという矩形の中にもう一つ矩形を作って、その中で奥行きを表現するということは、出口なしという感情を喚起するのかも知れない.

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近づいてきた車は街灯の下で止まって中から男女が出てきてその後ろから千鳥足の男が続くと、前を進む女が千鳥足の男を待って並びそうになったとき足を掛けて男は地面に倒れる.手前の車では少女が、足を掛けて倒したと叫ぶと運転席の女はライトを点灯してその場の様子を照らし出す.倒れた男は女に罵声を浴びせながらもう一人の男に助け起こされ、女とともに建物に入って行き、もう一人は載ってきた車の方に戻る.

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建物に入った二人は二階の寝室で男はベッドに倒れ込み、女はまた下に戻る.ライトで照らした車の女性は外に飛び出し戸口に駆けつけ両手でドアーを叩くと二階から戻った女が現れ二人は抱き合い口吻を交わす.二階から降りてきた方がジェーン.バーキン(右)で待ち受けていた車から出てきたのがマルーシュカ・デートメルス(左)である.ジェーン.バーキンが無駄とは知りながらマルーシュカ・デートメルスに来てくれと連絡して、マルーシュカ・デートメルスは男を足を掛けて転ばしたのが合図であると出てきたという.

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少女も二人の様子を確かめに出てきた.ロール・マルサックが演じている人の心を読むという少女で彼女が何者かは最後まで解らない.

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さっき車から先頭に降りてきて倒された男を抱き起こし二人がドアーを潜っても入らずに車の方に戻った男は女三人の様子を窺っているがフィリップ・レオタールが演じている.

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二階のベッドに寝そべる男が彼女の夫でアンドリュー・バーキンが演じる.アンドリュー・バーキンとジェーン.バーキンは実の兄妹である.二人ともイギリス人で兄バーキンは殆ど英語を話す.妹バーキンは夫以外とは舌足らずなフランス語でそれが非常に魅力的でもある.兄妹で夫婦を演じている.マルーシュカ・デートメルスとジェーン.バーキンは同性愛の関係でそこから兄バーキンがバーキン妹を奪って夫婦になり、兄バーキンはマルーシュカ・デートメルスに嫉妬を感じている.

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これで登場人物全員が揃った.不思議な少女ロール・マルサックがこの五人に番号をつけている.1 番はマルーシュカ・デートメルス、2 番がバーキン妹、3 番が夫の兄バーキン、4 番が少女自身、そして 5 番としてフィリップ・レオタールが付け足される.

レスビアンの二人はマルーシュカ・デートメルスの宿泊するホテルに逃れる.併しバーキンの一寸した言葉にマルーシュカ・デートメルスは怒り狂い泣き出して廊下に出て泣き崩れてしまう.この二人はどちらかが直ぐに泣いてしまう.

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その小さなホテルにはこの二人の怪しい男がいて見張っている.彼らは兄バーキンに雇われた男達であるが、フィリップ・レオタールに追い払われ二度と登場しない.

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この二人 4 番の少女と 5 番のフィリップ・レオタールはこの物語の狂言回しであり時として同じ姿勢で事の成り行きを見守る.少女がカウンターに肘をつくとフィリップ・レオタールも同じ姿勢を反復する.フィリップ・レオタールはバーキン兄の友人であるがバーキン妹の写真を持っていたりするが、少女に彼女は自分のものだといわれる.これは奇妙なこと 2 番のバーキン妹は他の四人全てから愛されていると云うことになる.また、この奇妙な少女は常にピストルを携帯していることも解る.

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そしてさっきまで泣いていた、レスビアンの二人はマルーシュカ・デートメルスとバーキンの愛の営みが映し出される.

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マルーシュカ・デートメルスはゴダールの「カルメンという名の女」やマルコ・ベロッキオの「肉体の悪魔」でのヒヒヒと聞こえる彼女独特の笑い声が訊きたかったがこの映画ではない.彼女の黒々とした髪の毛と整った顔立ちは北アフリカのアラブ出身かと思っていたがオランダ生まれであった.

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少女の二人への怪しい男達がいるので他に逃げた方が良いという忠告に、女三人は別のホテルへと出て行く.一方フィリップ・レオタールは兄バーキンにこのことを知らせに行く.

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ホテルを移るのにマルーシュカ・デートメルスの運転する車の助手席にバーキンス妹が座り後部座席に少女がいたが、ここで奇異妙なことが起こる.走行中少女はバーキン妹に後ろの席に来るよう誘い移ると少女は庇護者であるかのように彼女を抱きしめる.このことは後々意味を持つ.

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別のホテルに移って二人のレスビアンの泣き声が漏れ聞こえる隣の部屋で少女は鏡にピストルを向け彼女の頬には涙が光る.彼女はティッシュを丸めて水に濡らして耳に栓をする.

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レスビアンの二人の愛の営みが映し出されて劇場で観たときはモザイクが掛かっていたマルーシュカ・デートメルスの黒々とした恥毛と脇毛がまで見えもしてこれには感動する.抱き合いながらも二人のどちらかは声を上げて泣いている.結局マルーシュカ・デートメルスは別れようと言い出すのである.バーキン妹は泣き出すがマルーシュカ・デートメルスは服を着せてやる.

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二人が服をつけた後にバーキン兄がやってきて凄い勢いで二人に何度も平手打ちを喰らわし、マルーシュカ・デートメルスも戦闘的に打ち返して修羅場となる.

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バーキン兄は更に惨いことを要求する.俺の前でやってみろと妻の服の前をはだけてけしかけると、何と思ったかマルーシュカ・デートメルスはそれに応じようとする.

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そうして傷つけ合う三人であるが、泣き出す兄バーキンを慰めるのはマルーシュカ・デートメルスである.彼女に私のことを忘れさせろと注文する.

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嘆き悲しむ傷ついたバーキン妹を慰めるのは少女である.ここでも庇護者のように抱きしめる.

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皆で食事をしようということになってバーキン妹と少女以外は下のバーで待っていると少女が降りて来て、バーキン妹が立ち去ったと告げる.その知らせにフィリップ・レオタールは駅を見てくると云って外に飛び出し、マルーシュカ・デートメルスも車を見に飛び出す.

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バーには少女とバーキン兄の二人だけが残されるがここで奇妙な事件が起きる.少女がこれも庇護者のようにバーキン兄を抱き占めるのである.ほんの一瞬の出来事である.このことも記憶の留めておこう.

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この地は北フランスのドーバー海峡に面した街、カレーかダンケルクである.バーキン妹はドーバーに向かう連絡船に潜んでいることをフィリップ・レオタールは嗅ぎつけ皆を船に連れてきて、彼一人が船室を突き止めに行き彼女を見てけて言い寄るが拒絶される.糞男とまで罵られて引き下がるしか無い.部屋の番号は夫に告げられるであろう.

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船はドーバーに向けて出航した.

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兄バーキンは妻の元に赴き愛を囁くが、

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彼女は甲板にいるマルーシュカ・デートメルスの許にやってくる.

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そこに夫がやってきて彼女を捉えようとする.船の狭い階段を少女が妹バーキンを連れ出し、フィリップ・レオタール、マルーシュカ・デートメルス、兄バーキンが組んずほぐれつ折り重なるように降りてくると、一人下に降りた少女がピストルで狙いをつける.動くなの声に全員は動きを止めるが次の瞬間銃弾は放たれバーキン妹の胸を貫く.マルーシュカ・デートメルスが彼女を抱きかかえて逃げ出していく.

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二人を追おうとする兄バーキンも二発の銃弾を浴びてその場に倒れる.女三人は車に乗り少女がバーキン妹を抱きかかえている.最後に銃声がして誰が誰を打ったのかは示されずに映画は終わる.

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兄妹で演じる夫婦の二人が死ぬのであるが、何故この二人なのか、それはこの二人は少女に抱きしめられたからである.映画はそれしか語っていない.どうにでも解釈できるが映画が表示するのはそれだけである.

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