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マノエル・デ・オリヴェイラの「クレーヴの奥方」に感嘆する

BeauMale
2012.9.28

ポルトガルの今では百四歳で映画を撮り続けているマノエル・デ・オリヴェイラ Manoel de Oliveira の「クレーヴの奥方 LA LETTRE (1999)」である.この監督の生年は 1908 だからこの映画を撮った時は 九十一歳である.私事であるが筆者が映画学校に行くと言いだしたときその歳で今から行ってどうするのだと必ずいうものがいるだろうと思ったが、幸い一人しかいなかった.その一人はうんと若年なのに最も保守的であるというのは大いに呆れてしまった.もしそう云われたら現在生きている監督で最年長のオリヴェイラは百歳を超して今なお斬新な映画を撮り続けているぞと言い返すつもりであったが一度しかその機会はなかったのである.逆にオリヴェイラなんかまだ撮り続けているので絶対に映画学校に行くべきだと励まされたことはある.だからこの監督に較べれば未だ筆者などはひよっこの歳である.

この監督の映画でこの映画「クレーヴの奥方」が最初に観た作品であるがヴェンダースの「リスボン物語」で俳優として出演してチャプリンの真似までしているのを観た時はこの大監督だとは知らなかった.この映画は十七世紀にラファイエット夫人が書いた小説「クレーヴの奥方 Princesse de Clèves」を割と小説通りに舞台を現在に移して描いている.オリヴェイラの映画を一度取り上げてみたいとは思っていたが書くとなると非常に難しい.実際途方に暮れながら書いていく.

La Lettre Trailer
YouTube - La lettre (1999)
YouTube - A Tribute to Manoel de Oliveira
YouTube - Lisbon Story - Wim Wenders - Manoel de Oliveira - (Italian/English)


出だしはロックのコンサートの舞台で、

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次が楽屋でこの人物はこの段階では誰とも知れない.鏡が中央と右に置いてあってこの後にクレジットが入る.

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そしてこの画面、ここは宝石店のようである.前の画面に続いてここでも鏡が幾つも配置されている.こちら側の男性(アントワーヌ・シャピー)の方がお客で彼は気になるものがあるらしく度々振り返る.

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キャメラは別のお客に向けられるシャルトル夫人(フランソワーズ・ファビアン)が娘(キアラ・マストロヤンニ 彼女はマルチェロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーヴの娘である)に首飾りを選んでやっている.

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キャメラは元に戻るとさっきの男がこちらを向いている.

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その視線の先はシャルトルの娘カトリーヌである.

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この二人は社交界の噂好きである.この画面に移るときこの二人も宝石の話をしていたので同じ宝石店内かと思っていたらいつの間にか場所が何処かの貴族の屋敷に変わっていた.

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この屋敷のこの日のパーティーにはさっきのシャルトルの娘とフランソワ・ドゥ・ギーズ(スタニスラス・メラール)が来ていた.シャルトルやギーズといったルイ王朝の大貴族の名が小説と同じに使われている.

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噂好きの二人のご婦人が一人ずつ映され、

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もう一人はこれであるが彼女は来たばかりの高名な医者であるクレーヴ氏(アントワーヌ・シャピー)がシャルトルの娘を気に入っているようだと見つけ、

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クレーヴ氏は宝石店でシャルトルの娘を見ていた男性であるが彼を伴ってシャルトルの娘の前に連れて行く.娘の連れのフランソワに対しては全くの無視である.そのまま娘とクレーヴを伴ってシャルトル夫人に挨拶に行く.

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併し、娘はフランソワが待っていると云って戻ってくるがクレーヴはエスコートする.

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二人になるとフランソワはクレーヴの攻勢に心配になったのか、娘に君を誰よりも強く愛しているのは僕だという.

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貴族の館ではマリア・ジョアン・ピレシュ(本人)の弾くピアノの演奏会が行われたが字幕でパリではペドロ・アブルニョーザ(本人)の演奏会が行われている.

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点滅する光の中大勢の聴衆が詰めかけている.

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キャメラが寄って彼は歌を歌う.語りかけるような歌である.

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また字幕でフランソワの情熱を他所にクレーヴとカトリーヌ・ドゥ・チャルトルは結婚して新婚旅行の後パリに居を構えるとある.更に字幕で文科省の長官があるパーティーにペドロ・アブルニョーザを招待したとあって彼がピアノを弾き歌い出す映像となる.

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マイクを持った彼はクレーヴの奥方の前に彼女に語りかけるように歌い、彼女も嬉しそうに顔をほころばせている.この光景にクレーヴの奥方の母シャルトル夫人だけは気付いている.

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演奏会の後社交界の面々がペドロに挨拶に来て、ペドロと連れの女性が挨拶を返す.

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押し黙っているクレーヴの奥方にペドロは感想を訊く.彼女は笑顔で応える.

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ペドロは若い女性達に囲まれてサインを求められている.

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夫にせかされて退場していくクレーヴの奥方はそれを名残惜しそうに振り返って見詰める.

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また字幕でシャルトル夫人は重い病に倒れ別荘で静養しているとは云って夫人がベッドに横たわり医者が診察している映像へと変わる.彼女は医者に本当のことを云ってくれ、彼女の命は後どれだけかを尋ねる.医者は尊敬するあなたの友人としてと断って命は短いという真実を話す.

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そこに娘のクレーヴの奥方が見舞いに現れ夫人からお医者様をお見送りして話すことがあるからまた戻ってくるようにいわれる.

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階上を半周ほどして下に降りる階段を降り、その間医者の後に従うクレーヴの奥方だが、何処で母親の容体を医者は娘に伝えるのだろうかと思っていたら階段の途中であった.母がもう先が長くはないことを知らされる.

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戸口を医者が出ようとするとペドロと鉢合わせである.

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クレーヴの奥方は穴の空くほどペドロを見詰める.

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彼はシャルトル夫人の容体が心配で見舞いに来たという.そこに丁度夫がやってきて、彼女は母の元に戻るために階段を上がりクレーヴ氏はペドロを居間に誘う.

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一寸世間話をしたらクレーヴ氏に電話でペドロは一人残されるがクレーヴの奥方の肖像写真を見つける.

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その様子をクレーヴの奥方が二階から見ている.

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ペドロは写真を自分のポケットに入れてしまう.

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母の部屋に行くと母は彼女の手を握ってもう寿命は長くないと聞いたろうが心残りが一つだけあるという.それは、これは前々から気付いていたがあなたが歌手との色恋沙汰で評判を落とすのではないかということだと娘に切々と語る.

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クレーヴの奥方は一言も発しないで涙ながらに母の最期の言葉を聞いている.

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ペドロはニューヨーク公演中であるが何とか日程を調整して巴里に戻ったと字幕があってこの画面である.筆者はここがどこだか解らなかったが解る人には一目で分かるのだろう.多分ペール・ラシェーズ墓地なのだろうと思う.ペドロがそこにいた.この彫像の足下から見えるという映像で現される.

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彫像は哀しみの表現のこれであるが、

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ペドロはそれを見上げる.

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彫像に近づいたペドロが足の間から見える.

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切り替えされると足の間から霊柩車を先頭に葬列が横切っていくのが見える.物語の展開には何の関係もない彫像がこういう形で演出に持ち込まれるのは見事としかいうほか無い.ただもっと先にも彫像はペドロとセットで現れその時はクレーヴの奥方は彼と顔を合わすという役割も持っている.

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葬列の先頭はクレーヴ夫妻である.

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そのアップに促されたようにペドロもアップで映され、

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引いた画面になると、

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クレーヴ夫妻がお悔やみを述べる人々に挨拶する画面がロングで映される.

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何人かが夫妻にお悔やみを述べる画面に続きペドロ自身がお悔やみを述べる画面になるがクレーヴの奥方は一瞬たじろぐ様子で夫の顔を伺う.

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葬儀の後ペドロがこの赤い車でクレーヴ家を訪問し、部屋で音に気付いたクレーヴの奥方が窓から庭を眺めてそれと認めるところである.併し取り次ぎに来たメイドに彼女は会えないと答えさせる.

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クレーヴの奥方の心は悩み苦しんでいる.彼女にはたった一人何でも心の内を話せる親友がいて彼女は修道女として修道院にいる.その友に奥方は悩みを聞いて貰いに行く.修道院の回廊で友を待つ彼女.

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修道女が出て来て、

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二人は回廊で抱き合って再開を喜ぶ.

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クレーヴの奥方が悩み事のあることを友に訴える.

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母が死んで慰めがいるとクレーヴの奥方はいうが、修道女は他にもありそうだと直ぐに見抜く.一室に招じ入れられるとそこには肖像画が掛かっていてこの人は ジャンセニスム をこの修道院に持ち込んだ院長だと説明される.と云うことはここはポール・ロワヤル修道院なのかも知れない.クレーヴの奥方は学生時代に他の女友達と違っていて男に身を委ねなかった、更に彼女たちは羞恥心のかけらもなく自分にその事を話したと云う話から始める.修道女はそれは表面的快楽を追う世俗的な生き方で彼女の生き方は正しいという.彼女は夫を好きであるが本当の愛を感じていないという.

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夫は私を愛してくれ尊敬と賞賛を持って結婚したが愛を感じる事は出来ないという.安心や心の安らぎは得たが彼の愛に応えられないことが辛いと云う言葉に修道女は結婚の礎は愛ではない、情念でもなくそれは同意だという.そして同意は愛の一つの形だという.修道女はそれだけではないだろうともっと先を話すように促す.クレーヴの奥方はペドロのことを話す.彼を愛しているという.感情は抑えられるが消し去ることは出来ないという.彼の方も自分を愛していて彼が密かに自分の写真を盗むところを目撃したという.修道女のそれでどうするつもりか訊くが彼女は逃げるだけだと答える.修道女は彼を忘れろ、あなたの平安を壊す危険な男だというと、彼女は私の試練だと答える.

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その後ある日クレーヴ夫妻の許に友人夫妻が来ていて四人はテレビを観ながら政治や現代社会について話しているがクレーヴの奥方は一言も話さないでいたて.臨時ニュースで空港近くの高速で十台の玉突き事故があって負傷者の中にペドロ・アブルニョーザがいるというのを聞いてクレーヴの奥方は叫び声を上げる.友人夫妻は驚いて夫のクレーヴを見るが彼は困惑した顔で黙っている.

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翌日彼女はまた修道院を訪れその事を友人の修道女に話す.その後友人夫妻は直ぐに帰っていって夫は顔面蒼白で黙りこくり疲れたと云って寝室にいってしまった.修道女は過剰な反応であるがあなたは潔白であり時が忘れさせるのを待つしかないという.

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字幕で、皮肉なことにペドロの入院した病院は修道院の近くだったと出て、クレーヴの奥方が病院に行くところが映される.

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担当の医師は夫の同僚であり彼は明日には退院だと聞いて軽くて良かったとだけ云って病院を出る.

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併し病院にはフランソワ・ギーズが来ていて彼は彼女の車の所までやって来る.彼は恋に狂った男に慰めの言葉を掛けてくれと云うが彼女は夫が待っているからと全く相手にせず車を出す.フランソワは彼女を追ってくるが別の車に撥ねられて死んでしまう.彼女はその場ではその事を知らなかった.撥ねられる映像は出ず音だけで表現される.

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夫は彼女が病院に行ったとは知らず同僚から知らされ、そこにフランソワもいて彼は君を追って事故死した.とても不自然だと彼女に詰問するが、彼女は修道院から近いので寄って医者と話したが本人には会っていない、フランソワの死は後で知ったのだ.変に勘ぐる方が不自然だと言い張る.

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この堂々巡りの言い合い、彼女の姿が鏡に映って続き、

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最後は彼女の背中と彼女の鏡の像と云う形の演出である.夫はニュースを聞いて彼女が叫んだことを指摘するがそれは本能的なことで心は平静だ.修道院から近いだけで寄って容体を聞くのは当たり前の行為だ.そんなこと云うのだったらともっと前の話を持ち出し夫を非難する.

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事故の前から企画されていたペドロの写真展に彼女は訪れた.

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このような写真が並んでいって一枚一枚を彼女は見ていくがその視線の主は最後に彼女と明かされる.すると彼女の視線は写真ではない他のものに向かう.

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それはペドロであった.彼は杖をついている.

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彼女は素知らぬ顔でペドロの横を通り過ぎようとするが彼が呼び止めて初めて気付いたというように止まり夫が待っていると行ってしまう.

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その数日後という字幕の後また彫像が出て来てキャメラは彫像の廻りを半回転すると、

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杖をつくペドロの姿が現れる.埋葬式の時も彫像とペドロという組み合わせであった.これは偶然とは思えないが何を意味するのかは解らない.

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ペドロがベンチに腰掛けうと後ろの木立の垣の後ろから声が聞こえてくる.声は君は何かを隠しているという.

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ペドロの座るベンチの裏側でクレーヴ夫妻が話している.夫の声は辛いだろうが私はそれを知る権利がある、それが君のためでもあるという.

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クレーヴの奥方が前から告白しようと思っていたが切っ掛けがなかった色々心配ごともあって中々言い出せなかった.夫はその沈黙が言葉より辛い、聞いた方が未だ楽だという.というのがペドロにもはっきりと聞こえている.

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奥方、あなたに誠実でありたいと思うけれど怖いのだと云うと夫は傷つけるからかと尋ねる.

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人妻を恋するものには夫の名声など関係無い.嘆くより憎むべき考えだ、知りたい、話してくれと夫.妻は潔白だからこそ告白する勇気が出た.今まであなたに弱みを見せたことなかっが遠くに行かせてくれるならと奥方.別れたいというのかと夫.奥方は否定して私の気持ちがあなたを不快にしたら謝りますという.そして結局私のこの思いは胸の内に秘めておくと続ける.間違いかも知れないがあなたに相応しい妻でいるためにこんな告白も出来るのです.より大きな友情と尊敬があるからです.哀れと思って私を導きまた良ければ愛も注いで欲しいという妻に言葉に夫は手で顔を被ってしまう.

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奥方が夫の足下に跪くので夫は慌てて助け起こし、こちらこそ哀れんで貰いたいという.強烈な苦悩のため上手に答えられないが、君は尊敬すべき賞賛すべき女性であるのに私はこの世で最も不幸な男だ.会った瞬間に君を愛した.だが君は私に恋心を抱かずに他の男を恋している.そして君の心を奪った幸せな男は誰だと聞く.彼女は止めてくれと云うばかり.夫として恋人として嫉妬を感じる、だが完璧な妻には嫉妬は出来ない.君の誠実さと信頼は尊い.告白を聞いても愛していけると夫.更に君が避けようとする人は誰かを問うが、彼女は無理強いしないでくれ、云わないと決めたのだと答える.再度尋ねても答えない.彼女は弱さから告白したのではない.隠していることより告白する方が勇気の要ることだからと云う.夫はペドロの盗んだ写真立てのことに言及する.探そうとしたときのあの狼狽振りは何なのだ私だけに権利のある写真を誰かにやったのかと詰問する.奥方は私のの告白の何処かに嘘はあるかと云う.そして写真は上げてないという.盗むところを見ただけで姿を現したくなかった、彼が口にすべきで無い言葉を言うのを恐れたからだと応える.愛しているという言葉と夫.彼などんな愛の証を見せたのかと尚も問う.それに気付いた自分を恥、弱さも味わったと彼女.それ以上は訊かないでくれという妻に夫は悪かった質問して答えなくて構わないという.

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何かこうした親密な切羽詰まった語らいには予期せぬ邪魔が入るものである.この男がいきなり話しかけてきて食べ物も職もない、故郷に帰りたいがその金がないので帰れない.百フラン恵んでくれと云ってきた.

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クレーヴは直ぐ金は出して遣った.妻は不平等な社会を嘆く.夫は併し彼は麻薬中毒だと云うが妻の社会の犠牲者だの言葉に賛同して話はここまでで二人並んで家路を急ぐ.

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ペドロは生け垣の反対側を見に来るが、

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夫婦が仲睦まじく去っていく後ろ姿を見送るだけである.

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字幕が入り海外公演の契約でペドロは国外に出て、併し巴里に戻ってきたらクレーヴの奥方はロンドンに発つ.併し夫の頼みで程なくして夫の許に戻るが彼女は修道女を訪ねたとある.修道女はクレーヴの奥方に告白して良かったという.夫の愛は完璧で今時珍しいという.彼女はその通り夫から愛されている.

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併し夫は何事にも無関心になり激情に駆られると云うこともない.それは嫉妬のなせる技でその事に責任を感じるとクレーヴの奥方は云う.修道女は夫もあなたも今時珍しい人である.あなたも犠牲を払っている.普通なら駆け落ちをしているところだが夫に誠実でいるあなたには責任はないという.彼は苦しみ衰弱している.私の愛も誠実も本物だが何の役にも立たないと奥方.

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字幕で夫は健康の回復のため母の残した田舎の別荘で静養していることが知らされる.クレーヴの奥方の献身的介護にも拘わら夫の容態は悪化するばかりである.奥方が二階の窓から庭を眺めると憔悴している夫がベンチにぽつねんと腰掛けている.この画面上等な本物のレースのカーテンが開けられ彼女の手が映るだけだが下の夫の様子が俯瞰で映されまたカーテンが閉じられるという何でもない演出であるがそれが素晴らしい.

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そして次がこのロングショット.左に蹲る夫、建物の入り口から彼女が出てくる.奥には年配の庭師が仕事をしていて彼女の姿が現れるとちらりとその方向に眼を遣る.これも素晴らしい.彼女はそのまま真っ直ぐに夫に近づいていく.

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そしてカットで彼女が庭木の影から夫の前に現れるのがもっと寄ったショットに変わって映される.彼女は告白をしなければ良かったという.

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そして彼女は夫の横に腰掛け後ろ向きの二人のショットで次は最初は彼女の側からのショットで次いでこのように夫の側からのショトに切り替えられる.彼女は結局あなたを傷つけただけだったという.夫は世間ののんきな夫のように欺かれるままでいたかったと云うが自分の言葉を打ち消してこれは心地の良い死だという.私が死ねば君は罪を犯さずに好きな相手をを幸せに出来るという.夫の罪という言葉にそれは非道い言い様だ、私はやましいことはいていないという.でも心は抑えられなと妻.夫は君を尊敬することで苦痛が和らぐという.続けて私は死ぬが私のことを懐かしむと云って欲しいという.彼女は私の人生でこれほど愛着を感じるのはあなただけだという.

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二人の沈黙に続いてそれに耐えられないかのように画面がこのロングショットに変わるが一体これは何かと思っていると、

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仕事をしていた庭師が仕事を中断して左前に小走りで駈け寄ると夫を支える奥方が左から現れ庭師が奥方とは反対側で夫を支えて建物に向かう.建物に入るところで庭師は手を放し、庭師が仕事に戻り入り口の戸が内側からがたん閉じられる.この一連のシーンに観られるショットの連続の素晴らしいこと.ここには世界全体が提示されているのである.映画とはこういう風に作られているという見本のようである.

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字幕で医者は夫の命はもう無いことを告げその数日後夫は死に、彼女は悲しみの余り理性を失ったとあり友人が修道女に会うことを勧めるとある.修道院の画面は割愛したが.その後その友人に付き添われて彼女は修道院に赴く.修道女はあなたは彼の大きな愛に対して誠実に答えた偽りではそれは出来ないと云うが彼女は彼が嫉妬に苛まれて死んだという.修道女はそういう風に考えるなという.

また字幕でペドロ・アブルニョーザは彼女に会えることを期待して彼女の家の目の前にアパルトマンを借りたとある.続いて字幕はクレーヴの奥方は暫く田舎に引っ込んでいたがその苦悩に打ち克ち悲しみを抱えたままパリに戻り自然と彼女の足は夫に告白した公園に向かったとある.

このシーンは公園の鉄柵越しに彼女が公園の入り口に向かう素晴らしい横移動である.縦の鉄柵が左に流れていく.

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公園の入り口で彼女の足は止まる.何を見たのであろうか.その視線の先には、

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ペドロがベンチに腰掛けていたのである.

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彼女は今来た道を足早に引き返し、鉄索が右に流れる.

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ペドロは小走りに公園の入り口に向かいその姿が公園の外からの鉄索の動きで捉えられ、

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公園を出たところで、結局立ち止まって追うのを諦める.

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するとこの笛を吹く彫像である.笛の音が聞こえてくる.これでペドロと彫像が三度も現れた.どういう意味なのかは解らない.

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彼女が自宅の二階の自室に戻っても笛の音が聞こえる.これはペドロが現れる予感がする.彼女が窓の方に近づき切り変わって外からレースのカーテン越しに彼女の姿が捉えられる.

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彼女レースのカーテンを開ける.

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正面の家との間の往来をバスが右から左へと移動するのが彼女の視線に入る.

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バスが通り過ぎるとそこにはペドロが立っていた.

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彼女ははっとして窓から離れるが恐らくそれが現実かどうかを確かめるためだろう、もう一度窓により外を眺める.

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併しさっきペドロが見えた場所には誰もいない.

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だが彼女が眼を上げると、

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正面の家の二階の窓からペドロがじっと彼女を見詰めている.キャメラは室内に切り変わると彼女は窓からさっと離れる.直ぐさま電話が鳴るが彼女は出ようとしない.

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クレーヴの奥方は修道院に友人の修道女を再び訪ねる.奥方は彼が怖いという.自分の家の目の前に越してきていつでも後を尾けられ、彼の視線や言葉が怖い.困ったことに彼を意識せざるを得ない自分なのだという.修道女はそれは子供の振る舞いだという.単純な話を複雑に考えている.お互いに熱烈に愛し合っているのだから結婚すれば良いだけの話ではないか.自分自身を犠牲にする理由はない.亡くなったご主人もそれは望まない.あなたと彼の二人の幸せの問題だという.奥方は自分をさらけ出しても彼のように女性に人気のある歌手はきっと直ぐにも情熱が失せてしまう.それが怖いのだと云う.そうなるともう立ち直れないのだ.併し今後逃げて暮らすというのは空しいことだ、ここに入ったらどうかと修道女.奥方はそうしたいけれども思し召しがないからできないという.

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その後ペドロの演奏風景が入って字幕で彼が奥方の行方を捜したが見付からない.そこで奥方の友人を尋ねると出て、その会見の様子が映される.この友人にも全く行方は解らない.ひょっとしてあの奥方の幼なじみの修道女なら何か知っているかも知れないというのでペドロは修道女に尋ねてくれと依頼する.

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彼女は修道院に行って直截話を聞くが彼女も何の情報も持っていなかった.

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その後修道女にアフリカから手紙が来たと字幕.彼女は声に出して手紙を朗読する.あなただけに手紙をするが居場所は秘密にしてくれとある.普通手紙の内容は書いた本人が朗読するのをナレーションとして流してこのように読む側が全部を朗読するシーンは使わないと思ったが全然違和感はない.

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アフリカに布教に行くという若い修道女達に乗船する直前に出会い話を聞くと自分も行くべきだと感じていったという.いるのは地の果てのような難民キャンプで、大半が子供、飢えと病気の中で布教どころではない.食料と薬の運搬が何よりも必要なことである.この悲惨な状況は逃げ出したいが彼女たちの献身だけが私を思いとどまらせるといった内容である.

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最期の画面はペドロ・アブルニョーザのコンサートで彼は絶望といった感じの悲痛な歌を歌っている.

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オリヴェイラの映画は確かに取っつきが悪い.併し、物理学者が宇宙を数学の言葉で描くのと同じに映画は映像という言葉で世界を描く.人間は世界を直に触れるということはできずにそれぞれの分野の言葉で触れることが出来る.オリヴェイラの映画はそれが見事に出来ている映画である.

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