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ロベール・ブレッソン「ラルジャン」という映画の希望は?-2

BeauMale
2013.9.3

昨年の十月以来、今年になっても一本書いただけでずっとご無沙汰であったが、前に同じ題名で書いたのは昨年の四月二十日、凡そ一年半前のことであった.黒沢清監督の「21 世紀の映画を語る」という書物を読んで非常に衝撃を受けたのだがその最後にロベール・ブレッソンの「ラルジャン」は二十世紀の映画であるが二十一世紀の映画の希望があるという言葉、もう一度そのまま引用すると

二一世紀の映画はあまりに不吉で、暴力に満ちているのですが、まったく救いがないのかというと、決してそうではない。暴力や死や不幸はもちろんいたるところにある。しかし何かはわからないが、救いはある。そして、その救いもまた、外側の、しかもすぐそばにあるかもしれない。まだ見えていない.まだ映画のなかに描かれてはいないけれども、映画のすぐ外側、すぐ隣にひょっとすると希望があるのではないか。そしてじっと待っていると、フレームのすぐ外側から、いよいよ希望の輝きが差し込んでくるのではないか。そんなことを感じさせる、二〇世紀の傑作の一本、『ラルジャン』をご覧ください。

とあってそれ以前に劇場で観てその悲惨さにあっけに取られた映画であるがこの悲惨な映画の何処に希望があるのだろうかと TV から録画した DVD を何度も観たがよく解らない.その解答は一体何処にあるのであろうかと黒澤監督は今通っている映画学校の講師にも名を連ねているので何時か授業があれば必ずこれだけは質問しようと思っていた.学校ももう終りで結局出会わず終りかと思っていたら昨晩授業があったのである.黒澤監督と撮影監督芦澤明子の授業で二人の馴れ初めなどの話の後質疑応答の時間が来た.それで早速その話をしてみた.


この二十一世紀の映画の話、スピルバーグの「宇宙戦争」を例に取り川が問題だという話.異界から川を越えていつの間にか現れる外部の露呈という話であったが、最初、一家惨殺する主人公を不思議なほど暖かく迎える老婦人のいる場所は小さな川を渡ったところにある.それは関係あるのかと思いを巡らしたがどう考えてもそうは思えない.だとすると最後の警察に自首してそれを観る群衆の所なのだがそれがどうして希望なのかが解けないのである.

老婦人の一家を斧を振るって惨殺した後男はバーのような所に来て酒を一杯飲む.

L'Argent Hosted by Picasa

そしてこれが奇妙な建物の構造なのであるがバーの外に出た姿は見えずにそのまま警察に来て自首をする.

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するとバーにいた人々がその事を知って皆右の方に移動して行き、

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警察の入り口で逮捕した男が出てくるのを見ようと誰彼が大声出すというでもなく押し黙って中をじっと見続ける.黒澤監督はそれなのだという.彼等の先に見ているものこそ希望なのではないかと云う話であった.

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そして話はここで終りではない.この結末を監督自身の傑作「トウキョウソナタ」でいただいちゃったという.なるほどそうであったのか.「トウキョウソナタ」は一家が息子の米軍入隊、夫の失業、妻は変な闖入者に半ば誘拐のように海辺に連れ出され、下の息子は親の反対に逆らってピアノを習うがひょんなことで一晩警察の厄介になり家族崩壊の状態で「知りすぎていた男」のようにそれぞれ大変なことを抱えてだが何事もなかったように朝になって家に戻りそして最後がこれである.

いきなり唐突に下の息子のピアノの発表会である.息子は受付だか審査員の許に行き何かを告げピアノの前に座る.

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父母はその姿を不安げに眺めている.

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息子の演奏が始まると審査員か受付の後ろに人々がぞろぞろ押しかけてきて彼の演奏に聴き惚れている.

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その人数はどんどん増えて素晴らしい演奏が終わっても拍手するでもなくただ人々は彼の方に目を向けるだけである.この間ずっと彼の後ろと画面正面の窓に掛かった白いカーテンは穏やかな光のもと柔らかな風の息吹に揺れ続いている.そうだったのだこれが「ラルジャン」の最後の希望であったのだ.

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弾き終わった息子は左奥の受付に行き何事もなかったように何かの手続をして父母が二人で息子の所に行ききょとんとした息子と共に左手前に去っていき人々は誰も言葉を発しない.


というわけでやっと一年半経って謎が解けたと言うことであるつくづく映画の見方がまだまだだと思った一日である.

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