viva cinema

河瀬直美「朱花の月」の雨

BeauMale
2011.9.17

というわけで今日見た映画は河瀬直美の新作「朱花の月」である.「朱花」は「はねづ」と読む.河瀬直美の映画はこれまで「萌の朱雀 (1997)」、「殯(もがり)の森 (2007)」の二本しか見ていない.どちらも奈良の鬱そうとした森が波打つ映画で素晴らしいのだが、かなり重い映画なので嬉々と行くようなわけには行かない.この「朱花の月」もそういう映画だろうなと思っていったら、確かに風景はそうであるが恋愛を扱っていた.今の二本しか観ていないので何とも言えないが恋を扱った映画はこれが初めてなのではないか.女性の胸よりしたまでのヌードまで出てくるし、その形の良い胸に男が抱きつくシーンまである.

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以下の画像は予告編から取ってきたので怒られるかも知れないが、今上映中の映画であれば話の筋も書いてはならないであろう.下の万葉集の言葉が予告編のようにスクリーンに出たかどうか覚えていないのだが、

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香具山は 畝火雄しと 耳成と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古も しかにあれこそ うつせみも 妻を争ふらしき

舞台は、香具山、畝火山、耳成山の大和三山で囲まれた藤原京の発掘現場のある村である.上の万葉の長歌は香具山と耳成山が畝火山を巡って恋の争いをしている.その争いは神代からあるもので、その争われる畝火山に当たるのがこの染色をしている女性である.

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相争うのはこの二人、実際取っ組み合いをして争ったり面識があるわけでもない.それにその争いがある関係だということも最初は気付かない.男の一人は村の会合で嫁を世話しようか、兎に角速く子供を作ってくれ、子供がいないと鯉のぼりも揚げられないと云われたりもして、それにこの二人髪が長くて顔が隠れていて違いが始めの頃は気付きにくい.

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女は母親からお婆さん似てきたねと云われ、お婆さんは本当はお爺さんではなく他に好きな人がいたけれども、当時は親に言われたことに従わなければならなかったからね.だからこうして私もいるしお前もいるのだと云われる.男の一人も母親役の樹木希林から、お爺さんに似てきたねといわれて、お爺さんは好きな女がいたけれども赤紙が来て恋を達成できなかったと云われる.この対称性は何なのだろう.祖母の生まれ変わりと祖父の生まれ変わりの恋なのだろうかと思うが、何ら説明はない.また、男の祖父は実際に国民服姿で現れ、現在の登場人物とも言葉を交わす.

この映画で圧倒的に凄かったのは突如降る今までこんなに凄い雨というものが映画に登場したことがあっただろうかと思うほどの豪雨が、クライマックスを演出して女は夫でない男と別れてずぶ濡れになって家に戻る.冒頭に紅花で染めるところが出てくるがこの映画の最後はその染めた布を燃やすところで終わる.よく聞き取れなかったが会わなくてもあなたの魂を懐に入れて持ち運べたらよいのにという万葉の歌が、これも最初の方と最後に出てくる.もう一つこの映画で目立ったのは異様にクローズアップが多い点である.誰を映しどのようなときにクローズアップなのかは見直さないと解らない.

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こんなに素晴らしい映画を封切りで観られるのは幸せなことである.観て置けよと人にも勧めて置いたが行ったのだろうか.

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