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ホセ・ルイス・ゲリン「シルビアのいる街で」は溜息が出る

BeauMale
2012.8.2

ホセ・ルイス・ゲリン(José Luis Guern)の特集があるというのを映画館のチラシで知ったがこの監督の名は初めて聞くのででも特集の中に「メカス X ゲリン 往復書簡」という題名の映画があって、メカスはジョナス・メカスで昔観た「リトアニアへの旅の追憶 (1972)」のメカスと組んで何かを撮るというのはただ者ではないと直感的に感じて、一応 DVD は出ているのかと探したらこの「シルビアのいる街で」がある.高かったけれどこれだけは手に入れておこうと買って置いた.直ぐにも観たかったが直に劇場で観られる.それまでは我慢することにした.特集は「メカス×ゲリン 往復書簡 (2011)」、「ゲスト (2010)」、「シルビアのいる街の写真 (2007)」、「シルビアのいる街で (2007)」、「工事中 (2001」、「影の列車 (1997)」、「イニスフリー (1990」、「ベルタのモチーフ (1983)」で全作品のようである.残念なことに「シルビアのいる街の写真」、「イニスフリー 」の二本だけはもう既に終わっていて見逃してしまった.

最初に観たのが「メカス X ゲリン往復書簡」でゲリンとジョナス・メカスの往復書簡のようにやりとりした映画を一本に纏めてある.ゲリンのことをヴィクトール・エリセがスペインで一番良い監督だといったというがエリセはスペインどころではなく世界でも最優秀の監督の一人である.その監督がそう云うなら一級の監督に違いないと思って観たら実に素晴らしい.物語のある映画ではなくメカスはカラーで日常のことやあの「リトワニアへの旅の追憶」の冒頭にあったようなセントラルパークのシーンのある色あせた映画を編集しながらここは僕の編集室だ、ヴィデオカメラ撮りながら編輯機を回すのは大変だ手が三本欲しいよといった感じで撮っていて、ゲリンは回転ドアーの反射を撮ってみるといってその映像やあちこちの映画祭で出逢った人たちの映像や最期は北鎌倉の小津安二郎の墓の映像とかで、兎に角この監督は素晴らしいとか云いようがない. メカスがゲリンに友よと云ってから映画の友よと言い直す.ここのところは目頭が熱くなる.

次に観たのが「ベルタのモチーフ(1983)」で彼の長編処女作であった.白黒映画の粒子の粗い画面であるが、緑の草原や麦畑に森に小川のせせらぎの画面がカラー映画のような錯覚を与える.農家の娘が主人公で十代の半ばより下の年齢らしい無口で殆ど何も喋らない少女の物語であるが、物語性は薄くドキュメンタリーとの区別が付かない.窓が板で閉じられた石造りの家にナポレオン時代の帽子を被る男がいてその男はいつの間にかいなくなって彼女はその帽子を盗んで穴を掘って隠している.その家に撮影隊が車を連ねてやって来て家の中にあの帽子があるはずと探すが見付からない.英語を話す女優が馬に乗って辺りを散策するが、この馬に乗るシーンを見た瞬間にこの馬が帽子のありかを見つけるに違いないと思ったらその通りであった.彼女の盗んだ帽子の持ち主は何者で撮影隊との関係は何であるかは全く解らないし、彼女が何故その帽子を盗んだかも解らない.兎に角映像は勿論のことショットショットの的確さは素晴らしいと云うしかない映画である.

もう一本だけ挙げておこう.「影の列車(1997)」は最初 1930 年に撮られた傷だらけのホーム・ムービーがあってそれから始まる.このホーム・ムービーが凄いのである.映像の美しさだけではなく傷が時には傷ばっかりの画面になってそれが正に抽象絵画のようでその良さに思わず息を飲み、その一連の白黒サイレントの傷だらけの映像が終わると現在のその同じ屋敷の中が映されるのだが、それはカラー映画であるがその色彩といい影の黒さと良い、これはまるでヴィクトール・エリセの映画のように素晴らしい.

そしてその白黒サイレントのホーム・ムービーの画面が現在のカラーで一部再現されるのだが、ある画面以外は古い映画の方が遙かに生き生きしている.そこの街の中を取った映像はこれは素晴らしいのだが、登場人物が出てくるのは何故か詰まらない.そして次はその古いフィルムを編輯機に掛けてあるいは二本を並べて行きつ戻りつするのであるが、編集機のカタカタという音が聞こえてこれも素晴らしい.「ジョナス・メカスとの往復書簡」でメカスが編輯機そのものを見せるのだが、そうして欲しかったと思ったが、後で気付いたことがある.この古い見付かったホーム・ムービーが本当にそうなのだろうかと云うことである.だって余りにも出来すぎている.リュミエールを引用していたりする.素人の映画愛好家のものにしては出来過ぎなのである.

普通映画のプログラムは買わないが、ゲリンのことは読むものがない.日本語の Wikipedia には未だ名前さえ載っていないし、英語版は載っていたか?フランス語版も非常に短い記述しかない.それでプログラムを買ってみたら、その見付かったという 1930 年のフィルム自体ゲリンが作っていたのである.ひょっとしてそうではないかと思ったが完全にフィルムの傷まで作り上げていたのはまた驚きである.

さてやっと「シルビアのいる街で DANS LA VILLE DE SYLVIA (2007)」である.この映画、劇場で観たばかりであるがゆっくり DVD で観たら益々好きになる.この DVD に付録で付いていたインタビューの中で彼は小津安二郎を先生と呼び学んだことは余計なものを如何に排除するかだと云っている.

YouTube - 映画『シルビアのいる街で』予告編


最初の画面これはよく解らないが布の模様が暗がりに動いている.カーテンなのだろうか外の光が壁に映っているようでもある.

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そして区切りのこういう文字が出て、その後また上の布の模様が映っているのがまた現れる.

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最初なんだか解らないこういうものが映されるが明るくなったり暗くなったりする.明るくなるとこれがトランクだと解る.この点滅は何なのだろうか、外の光が風で動くカーテンで点滅しているのであろうか.あるいは車のライトなのだろうか?

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次は地図に丸いグラスの下に敷くコースターが乗って、鍵と鉛筆が映っている.これも点滅する.コースターには LES NAVIGATEURS (飛行士達)と書かれていてこれがその店の名前であろう.その中央には手書きの地図らしきものが描かれている.これは伏線である.

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ここからは完全に明るくなってさっきのものの他に林檎と梨と目覚まし時計とスケッチブックがある.もののこういうかちっとした映像はヴィクトール・エリセとそっくりである.色も配置も考え抜かれている.

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次は窓であるがレースのカーテンがあってその模様が映っていたのだろうかと思う.勿論風を感じる映像である.

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そしてこれが主人公、タイトルにも彼(グザヴィエ・ラフィット)としか載っていないない.彼はこの姿勢で偶に瞬きして彼の右手が動くだけでかなりの時間この姿勢を保っている.

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大分経ってからその姿勢が横からの映像に変わる.彼は右手に鉛筆を持って何かを書いている.

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考えが纏まったのか膝を立ててその上にスケッチブックを置いてどんどん書き出す.無論鉛筆もスケッチブックも果物と一緒に置いてあったものである.筆者は子供の頃から濃い鉛筆が好きであったがそれは映画の影響である.ただ現実には映画のように書くときの音が出ないのが残念で堪らなかった.

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室内からこの突き当たりが T 字になっている道が映り手前から荷物を沢山持った女性が奥に向かって走って行く.

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奥の左右の道を様々な人や自転車や車が通る.

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唯々その様子をキャメラは静止して撮り続けている.小津の丸の内の会社の廊下はいつもこんな按配である.

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偶に手前から奥に向かう人がいる.大きなトランクを引いた男性が奥に向かう.

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ベッドの上で書き物をしていた主人公の彼が右のホテルの看板のある建物から出てくる.彼は最初奥に向かうが思い返して手前の方に戻って来てその時初めて彼であると解る.

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彼が手前に姿を消した後もこのシーンは続く.最初に小学生の男の子が二人お喋りしながら手前から歩いてきて二人が一番奥に行ったときに、この花束を抱えた男が出てくるが足が悪くびっこを引きながら奥へと進む.この人物は何度も同じように花束を抱えて登場する.

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縦の構図の長い画面はこのショットで断ち切られる.この街はフランスとドイツの国境のアルザス地方の町ストラスブールである.ゲリンはインタビューで出来るだけフランスフランスしていない街で撮りたかった.何処でもないある場所という設定にしたかったと答えている.

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彼が地図を広げて何処に向かうかを思案している.

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方向が定まったのかそれでも地図を見ながら歩みを続けるがこれが横移動で舗道を進む彼や行き交う人々をずっと捉え続ける.この横移動は素晴らしい.これまでが静だとするといきなり動になった感じでそのタイミングが良いのである.

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このビルは演劇学校のようである.衣装が運び込まれたりすることともっと後の話を知っているのでそれと解る.

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彼はその演劇学校の見えるカフェーの外の椅子に座る.彼の目的も何もこの段階では全く解らない.

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席に着いた彼は近くの席にいるこの女性に話しかけるのだが何故か全く無視される.文字通りの無視で全くの無反応なのである.

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そしてその直後運ばれてきたコーヒーをテーブルの上にぶちまけて仕舞う.地図をどけようとしたらコーヒー茶碗がひっくり返ったのである.そして第一日目が終わるのである.二日目の夜という黒い画面が出る.

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二日目はこの画面から始まる.このカフェー前の日と同じ場所だと思うが、前の日より時間が遅いのか沢山の客がいる.

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キャメラはその沢山の客達を映していく.

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彼も奥にカフェーの建物の手前にいるのが見える.カフェーの建物の硝子には CONSERVATOIRE supérieur de l'art dramatique に文字があってこれは演劇高等学院といった意味だが、このカフェーは演劇学校自体のものなのかも知れない.

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キャメラの映す人々は彼の視線と思えるときもあるしメタ視線というか映画の視線というときもある.この女性は彼が観ているのではないのかと思う.

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彼は女性達を見ている.そして彼女らをこうしてスケッチしているのである.何のためかは解らない.

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この金髪の女性も彼は描いているのであろう.

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スケッチブックに彼は文字を書く.Dans la ville de Sylvie (シルヴィーのいる街で)と書くのである.これはこの映画の題名である.本当は Sylvia であるがフランス語風に Sylvie と書く.漸くシルヴィーという女性の名が挙がってきた.

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この二人は何度も映されるがお互いに目を会わすことがない、会話もなく一体何のためにここにいるのであろうか?夫婦なのだろうか物語には関係のない人物であるが、この二人のことをあれこれ想像してしまう.この映画のこういう人々は不思議なことに一体どう言う人生を歩んでいるのかが知りたくなる.この二人は彼の視線の対象ではない.彼はこの二人よりもっと奥に座っていた.

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この美人はカフェーの従業員で中々注文の定まらないお客の数人のグループの注文を取り、持ってきたら違うといわれるが、お客自身何を注文したかを憶えていなく彼女からこっぴどく怒られる.お客の男性の一人が彼女の剣幕に驚いて、ここは先ずこのコーヒーだけを頂こうといった瞬間にコーヒー茶碗をひっくり返してしまう.

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その彼女が彼にはいジュースですと差し出すと、彼は僕は麦酒だよと云って彼女は直ぐに取り替える.さっきは彼女は注文通り持ってきたと怒るが、間違えることもあるという映像が何食わぬ顔で挿入される.

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この二人への視線は彼のものであろう.

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彼は女性ばかりをスケッチし続けている.

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それまでカフェーの中で弾いていた二人のヴァイオリンを弾く女性が外で演奏しだした.もの悲しい曲を弾いている.

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何を思ったか彼はヴァイオリンの女性達のいる道路に近い方に席を移し、二人の演奏風景が入る.

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併し彼の視線はヴァイオリン弾きに向けているのではなく店の中を見ている.前にいる人の影に隠れて見にくいのを首を傾げて見ていたが、前の人物がいなくなってこの硝子の向こうの臙脂色の服を着た女性が目標である.

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彼はその女性を見続ける.果たして彼女がシルヴィーなのだろうか?

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カフェーの中の女性が立ち上がった.

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そして外の彼のテーブルの脇を通って出ていく.

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どうしたものか一瞬考えたものの彼は支払いの小銭をテーブルに置いて立ち上がったがその衝撃でテーブルが揺れて麦酒のたっぷり入ったグラスが倒れてしまう.彼女は既に道の反対側にまで行ってしまっている.彼は倒れたグラスの音に気付いて振り返るがどうにも出来ないとそのまま彼女の後を追う.この映画で飲み物をテーブルにこぼすのは三度目でありその中二度は彼のやらかしたことである.近くのテーブルの女性が呆れてみる中彼は立ち去っていく.

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彼の追う女性は大通りではなく小道を行くが彼は中々現れない.小道を左に曲がった後も何人かの人通りがあるがなかなかやって来ない.

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書き忘れたが彼女はタイトルに彼女(ピラール・ロペス・デ・アジャラ)としか出ない.タイトルに載る登場人物は彼と彼女だけである.彼女が角を曲がって暫くしてから彼は走ってきた.

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彼も角を曲がったので、次のシーンは曲がった先の小道のどの辺まで彼女先を行っているのだろうという期待は見事に裏切られて、次のショットは路面電車の線路のある大通りで、彼女は大分先に進んでいる.ゲリンはインタビューでストラスブールを選んだ理由は何処でもない場所と云うこと以外に路面電車の走る街だからだと云っている.

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キャメラは切り替えされて彼の方を捉える.

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路面電車が彼女の横をすり抜け手前に進んでくる.

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彼女は皮の短い靴を履いているがその石畳を踏む音が響いてくる.

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距離が接近してきたことを表すのであろうかキャメラは彼女を大きく映すようになる.

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静止写真で見ると何の理由かも告げられることとなく、唯々女性を追うという展開は退屈に見えるが実際の動く映像だと実にスリリングなものである.角を曲がる度に一体次は何であるかと思いたくなる.これ程長い追跡は見たことない.普通は必ず短くなるように切っている.この映画では追跡そのもののスリルを撮っているのである.今までこんな監督はいなかったのではと思う.

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今まで彼女の後ろ姿だけであったが横顔が見えかけいる.距離を置きながらも彼は彼女に並びかけているのである.

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愈彼は彼女と接触するのかと思ったら、邪魔が入る.路面電車が二人の間に割って入るのである.その電車越しに見える彼女、

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そして同じく電車越しの彼の姿も見え、まるで映画の起源である、ヴェンダースの「アメリカの友人」で子供がそれで遊んでいたが円形に馬が連続して動く様子の絵が並びその廻りを等間隔に窓の開いたボール紙で囲んでそれがくるくる回ると動く映像が見えるそのルミエール以前の原型を思い起こさせているかのようである.

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次は大通りからそれた路地であるが、彼はどんどん距離を縮めながら彼女に向かって大声でシルヴィーと二度呼び掛ける.彼女はその声は聞こえているが全く無視をする.

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彼はどんどん迫ってきて手を伸ばせば届くほどになるがまた邪魔が入る.さっきは路面電車であったが今度は何であるか実際スリリングな話である.

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手が届きそうに近づいて扨どうなるのかと思ったら彼女の携帯が鳴った.肩から提げている袋から携帯を取りだし相手お確かめ話出す.彼は遠慮したのか歩みを遅くして、彼女の方はどんどん先に云ってしまう.この路地の入り口にはホームレスの女性が昼間から酒を飲み、空の瓶を道の反対側に転がすとその瓶は音を立てて坂を転がっていく.

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携帯を耳に当てたまま彼女は身を隠すように何かの店の入り口の壁により掛かって話を続けている.彼はそれに気付いて道路の反対側へと移る.少なくとも彼女にシルヴィーと呼び掛けてからは彼女は尾行に気付いていると思うが彼は気付かれているとは思っていない.

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彼女の姿がバストショットで捉えられると、

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切り返されて、斜向かいのビルの柱に隠れて観察している彼の姿が捉えられる.

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携帯で話し終えてから彼女は早足になる.

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彼女は気付いているはずでこんな狭い人気のない路地は危険だと思うだろうに彼女は入って行く.

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相手に見られないところでは彼はこうして走って距離を縮める.

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奥の壁に LAURE JE T'AIME (ロール、君が好きだ)と大きく落書きされた所を彼女は手前の方に曲がってきて次に右に曲がる.彼の方は尾行していないという偽装のためかそこを曲がらず真っ直ぐに行ってしまう.

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その後直ぐに戻って来たが、彼女がどっちに曲がったかを見ていなかった.左右を見るが彼女の姿はない.彼は彼女の行ったのとは反対の左に行く.

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彼は完全に彼女の姿を見失ってしまった.

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焦ってあちこち前に通った道も辿ったりして途方に暮れる.高圧ノズルで壁の落書きを消している男達の姿が捉えられるが水にホースと云えばリュミエールである.彼の後ろの細長い看板の色は彼女の色である.

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こういう色の店の映像がいきなり挿入されるがこれも彼女の色である.

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次は道路の給水栓が彼女の色である.

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そして今度は道の向こうに見える店がその色である.

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その色は彼を再び彼女に会わせる道しるべなのかと思ったが彼はそれには気付かずある建物を見上げている.

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鎧戸に掛かった女性の服が風でたなびくのを見ているが、服がたなびくのはジョン・フォードである.

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今度はもう一つ上の階で女性が半裸で髪にドライヤーを当てている.

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それが彼女なのかと思うが彼女はそれではない.彼が見上げる後ろの奥の建物の硝子越しに彼女が見える.最初に彼女を発見したのも硝子越しであった.果たして彼はそれに気付くのであろうか?

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それでも彼は彼女の姿に気付いたのである.こんなロングで彼女の後を追う彼が見える.

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これは前に来た道だと思うがその時とは逆方向に彼女を追っている.

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そしてこれは路面電車の駅であるが、その二人の前を電車が通り過ぎていく.彼女が口にくわえているのは煙草ではない.

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彼女はいきなり身を隠すようにサングラスをする.

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よく理解できないのは何故彼は彼女に話しかけないのかである.看板の女性が話すなと指を口に当てている.路面電車に乗らなくてはならないのである.ゲリン監督は路面電車のある街を選んだのである.路面電車はF・W・ムルナウがアメリカで撮った「サンライズ (1927)」なのである.妻をボートに乗せて殺そうとした男から逃げる妻が偶々来た路面電車に飛び乗り夫もそれを追って乗る.妻は怯えていたが路面電車が全てを解決する.だから彼も路面電車に乗らなくては彼女と心を交わすことは出来ないのである.

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二人は別々の入口から電車に乗り、彼は彼女の乗っていることを確認して彼女の方へ向かう.

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彼女は全くそしらぬ顔をしている.

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彼は彼女にシルヴィーと呼び掛ける.

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彼女は違うと応える.

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彼は六年前に「飛行士」という演劇学校の側のバーで君に初めて会ったが、君の描いてくれた地図を今でも持っている.君は演劇学校に入ったばっかりだという話をする.

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彼女はこの街には一年前に来たのだと決定的なことを云うが、

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それでも君はシルヴィーだろうと最早論理を越えたことを言う.

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彼はそれを繰り返すものだから、

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彼女はその思い込みがおかしくなり笑顔さえ見せるのである.彼女は彼にずっと後をつけられ気味が悪いし怖いしで途方に暮れていたという.

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その為何とか彼をまこうとあちこち複雑な歩き方をしたのだという.何故もっと早く云わなかったのだと云うが、彼はシルヴィーと呼んだけれども応えて貰えなかったのでずっと後をつけたと云い、

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彼女に気付かれているとは全く気付かずそんな怖い思いをさせていたことを平謝りに謝って自分をどうしようもない奴だと悔やむのである.

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彼が何度も謝るので彼女はもう良いから黙るように人差し指を脣に立てる.この動作は電車に乗る直前の大きな広告と同じだが、これが何とも魅力的である.

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彼女は次で降りるが一緒に降りたりしないでくれと云うと彼は無論そんなことはしないと約束して一人電車を降りた彼女に何度も謝る彼に彼女は微笑みを返す.

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彼はどっと疲れが出たように空いた座席に座り、

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もう追うことのない遠ざかる彼女の後ろ姿を見入るのである.

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彼は見るからに打ち萎れている.呆然と歩くばかりである.

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あのスケッチブックを取り出して最後の空白ページに何かを書こうと鉛筆を取り上げるが何も書けない.

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近くの水場で少女達が声を上げて水の掛け合いをしたりして嬉々としているが、彼には虚ろに響くばかりである.

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Les aviateurs (飛行士達)は六年前に彼がシルヴィーと初めてあったバーである.

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無精髭の伸び如何にも窶れて見える彼は後ろで踊る男女を尻目にカウンターに座っている.

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隣の大分飲んでいる女性に話しかけるが彼女はふいと踊りに行ってしまう.

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この黒髪の女性がアップで映されるが、髪の色がシルヴィーと同じという以外何も解らない.

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そして三日目の夜というタイトルが入り外の光で布の模様が壁に映され、暗がりの中で裸で寝る男女の姿が光が来たとき浮かび上がる.

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これが女性なのだがさっきの黒髪の女性なのかどうか解らない.彼女は目を覚ましている.

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そしてこれが彼で彼も目を覚ましている.何故二人は目を覚まして見つめ合っているのかそれは色々解釈できるであろう.

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扨、翌朝である.キャメラは彼があのシルヴィーではなかったシルヴィーを追って歩き回ったあちこちを映すのであるが、彼もその場所を歩き回ったのかどうかは解らない.この彼女を見失った「ロール、好きだよ」という落書きの所だけではなくもと沢山の場所を映す.筆者は彼が実際歩き回ったのだと思う.

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彼はカフェーで新聞を読んでいる.新聞の大見出しには Nouveau crime (新しい犯罪)の語があるが、これについてゲリンはインタビューで聞かれたが言葉を濁していた.もし意味があるとしたらその犯罪名はストーカーだ.

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彼ははっと新聞から目を離す.窓硝子には Ecole supérieur d'art dramatique (演劇高等学院)とあってここが最初シルヴィーではないシルヴィーを発見したカフェーである.彼の視線の先は彼女の着ていたのと同じ色の服を着ていた女性がカフェーから離れていく.もう条件反射となっている.硝子窓には彼自身も映っている.

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彼女が路面電車に乗り込んだとき顔が見える.二日続けて女性は同じ服を着ないだろうに、彼女であるわけがない.ここでも電車の窓に追ってきた彼の姿が映っている.

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彼はそのまま駅のベンチに腰掛け朝の出勤だろう電車の来るのを所在なげに待ちあるいは歩き回る女性達を見ている.一陣の風が彼女たちの髪の毛をたなびかせる.

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この女性の髪はこんな風にもたなびく.

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他の女性の髪も皆たなびきこういう映像が画面を息づかせる.二階の窓の鎧戸に掛かった女性の服が風にたなびくのはジョン・フォードだと指摘したがこれもそうであろう.ゲリンは風を演出できる監督なのである.

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彼らはそれをじっと見詰めているが、時折電車が着てお客を乗せその窓がフィルムのコマのように横切っていく.

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そんな電車にいた女性、これはあのシルヴィーではないシルヴィーなのではないか.

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電車が止まったとき彼女の姿がもっとはっきり見える.前の日とは違う服装をしてる.併しこれが現実なのかどうかも解らない.彼の頭の中だけの出来事かも知れない.彼は身を乗り出すように見詰めるが何もしない.

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彼の心の動揺を表すかのように一陣の風は女性の髪ではなく彼のスケッチブックのページをめくっていきそのページを繰る音が聞こえる.この本でもノートでも風でページが繰られていく様子は前々から撮りたいと筆者の思っていた映像である.昔ヴィデオテープを編集したとき冒頭の画面は作って分厚いゴダールの本のページを右手に当時は今よりもっと大きなカメラを持って左手でページをぱらぱらめくるところを撮ったことがあるが、あれは上手くいって今度は風でやりたいと思っていた.

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その後、さっき一人の女性の髪の毛が風で逆立つ様の写真を置いたがそれと同じ人物の髪の毛がたなびく映像が入って、路面電車がカーブに向けて進んでいく映像でこの映画は終わる.

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こんなにも繊細に出来ている映画、もう唯々溜息が出るばかりである.ゲリンの映画はある意味非常に単純にみえるが、一体この味は何だろうかという料理を食べているような、色々なものが合わさって、映画を撮っているその過程そのものにとてつもない豊穣さを感じさせる映画である.リュミエール以前から現在までの全ての入っている映画なのだと思えてくる.この映画の音楽のことで気付いたのは音源のない音楽は全く入っていなかった.今までで一番沢山スクリーンショットの画像を使ったのだが、ほらこんな画面があるといことが至る所にあってこうなってしまった.映画そのもののような監督である.二本見逃したが何とか彼の映画を六本も一気に観る事が出来たのは映画の女神が微笑んでくれたようである.

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