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キアロスタミ「トスカーナ贋作」を観る

イランのアッバス・キアロスタミ監督の映画はドキュメンタリータッチなので映像の監督かと思っていたが、「トスカーナ贋作」の DVD にフィルムメイキングの映像が付録として付いていたので観たら、優れて編集の人であった.普通編集の監督の方がこれを映すと何かが起こるといった証拠を掴みやすいがこの映画はそれが全く出来なかった.この監督は撮影するそばから編集してしまうという話も載っていた.

冒頭

この映画タイトルが出始めるのは下のの画像の人物のいない画面がずっと映されて、俳優スタッフの名が出てくる.それが切れたところでこの人物が登壇して、これから講演を始める人物の紹介が始まる.イギリスの作家が「贋作」というエッセーを出版してそれがイタリアで受賞してその記念講演である.身じろぎもせずにキャメラは真っ直ぐに段の上を映し続けている.講演者の受賞作家は上の部屋に宿泊しているので渋滞ではないが少し遅れるという話を始めると、壇上の人物は手前側の遠くを見るように、作家の紹介は自己紹介して貰った方がが良いと話すと、

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キャメラは 180 度切り替えされて客席の奥でサインをせがまれている人物がロングで映され、壇上の人からサイン会の時間は後で取ってあるから早く来るように促されてウィリアム・シメル演じる作家ジェームズが壇に近づいてくる.近づいてきてキャメラは彼が壇に上るところを映すかと思ったらそうはせずに近づいた最後に左に曲がって姿が見えなくなるとまた切り替えされ、最初と同じに紹介者の出迎えるところを右側から登場する.

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イタリア語で一言挨拶があった後英語で講演が始まる.

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講演はよどみなく続けられるが、キャメラの動きがそれを中断させる.併し講演の声はずっと聞こえている.キャメラがまた観客の方に切り替わると奥で立って聞いていた女性が近づいてくる.女性は一番前のさっき壇上にいた紹介者の隣が席が空いている.そこを目指してやってくる.

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この時初めてキャメラは横を向く.カットして彼女が座るところを映す.彼女は「彼女」という役名で出演しているジュリエット・ビノシュである.彼女は横の翻訳者に遅れた言い訳でもしているのか挨拶するのでスタッフの一人と解る.キャメラは直ぐに講演者の方を向く

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作家が翻訳者を紹介して立ち上がるよう要請するとキャメラは再び客席を向いて翻訳者は最初の紹介者で立ち上がって観客に軽く会釈すると、奥から男の子が演壇に向かって歩いてくる.少年は一番前の席の母親であるジュリエット・ビノシュと何事かやりとりして、母親が座れと身振りで示すが演壇の前を左に向かい今度はカットされずに席には着かず壁際までが映される.

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壁に凭れた少年は頻りに母親に身振りで話しかけ、

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母親もそれに応じて、もう少し待てと言うようなことを伝えているようである.

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結局二人は講演を中座することになって、母親は隣の翻訳者に何かを書いて渡して息子と一緒に出て行く.キャメラは講演はここまでで終わらせて二人の姿を映して行く.母親は五十歩前を歩き息子は追いつこうともせずゲームに熱中しながらぐずぐずと後を追い、角に来る度に母親は立ち止まって彼が来るのを見守る.この様子が後で出てくる事にまつわるとは想像も出来ない.

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この冒頭の極力キャメラの動きを止めて主要な登場人物が全て紹介されるが、このキャメラは素晴らしい.

ドライブ

次は、講演した作家が紙切れを持って場所を探している.洞窟のような地下に続く通路を降りて行くと骨董屋である.誰もいないのでぶらぶらしていると猫を抱いたジュリエット・ビノシュが出てきて、作家は外に行きたいというので彼女は見せたいものがあると彼をドライブに誘う.

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イランでの撮影でもアッバス・キアロスタミはドライブの光景を良く撮っている.併しこんな映像はなかったと思う.道を真っ直ぐ進むと両側の建物がフロント硝子にずっと映るのである.

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暫く進んで家並みが無くなると糸杉の並木が今度はキャメラが切り替えられて前方に縦の構図で映される.

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村に着いて

二人はある村に到着する.その村は結婚すると縁起が良いという村で平日でも人出があって賑わっている.ジュリエット・ビノシュの目的はこの村の美術館で、ローマ時代の絵だと思われていた作品が第二次大戦後に十八世紀の有名な贋作作者による贋作だと解ったが、出来映えの良さに美術館はこれを本物として所蔵している.これは「贋作」の作者の彼の持論そのものだろうと期待して連れてきた.併し彼は絵は素晴らしいが例はいくらでもあって脱稿するとき迷った程だと冷たい返事、せめて書き出す前にこれを見たかったと云って欲しいかったと彼女.

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ある喫茶店に入って彼が外で携帯で長電話している中に喫茶店のマダムは二人が夫婦だと思い込んで色々話しかけてきた.ジュリエット・ビノシュはその間違いを否定せずに十五年前に結婚して、彼はイギリス人で自分はフランス人.イタリアには五年住んでいるが彼はイタリア語を解さない.二人の間に息子が一人いる.という話をする.戻った彼にもそう云うことになっていると告げて二人は夫婦を押し通す.

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贋の夫婦

贋の夫婦はその場限りではなかった.その後ずっとこのゲームは続けられていく.併し、二人は悉くぶつかるのである.広場の噴水の彫像は素晴らしいと彼女が言うと、彼はくだらないと言い返す.この映画硝子や鏡に人や物が映る画面が随所にあるがこれもその一つ.フィルムメイキングでこの彫像は態々作らせたものであるということが解ったが、水を流せば男性性器から水がしたたり、ジュリエット・ビノシュはこの彫像が好きではなくそれを好きというのは難しかったのだそうだが、出来上がってみたら殆ど映されていないので驚いたという.その通り彫像は二人の間の奥の鏡に映っていて殆どまともには映されない.

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ジュリエット・ビノシュはこの彫像は誰でも気に入っているはずだから訊いてみようとフランス人観光客の夫婦を見つけてこの彫像の素晴らしさをいわせようとする.この四人が話し合っているところのキャメラには驚いた.ゆっくりと四人の回りを 360 度回るのである.注意していないと全くそれには気付かない.

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次のレストランで、葡萄酒を注文して彼女は立ち上がり鏡に向かって化粧をしイヤリングをしてと、初めて鏡に意識的に向かう画面が挿入する.イランの撮影で硝子や鏡に映る映像はあったのだろうかと思う.化粧し終わって、テーブルに着くと彼は不機嫌である.このワインを飲めという.コルク臭くて駄目だという.彼女は悪くはない、こんな田舎のレストランで無い物ねだりをするなと言い返し、昨晩は結婚十五周年だというのにあなたは鼾を掻いて寝ていたと詰る.彼の方は君は五年前にローマからフィレンツェの間猛スピードで運転しながら居眠りした.息子を愛していないのだろうと詰り返す.実際のことではなく良くもこう喧嘩の種を考え出せるものだと感心するが、実際二人は険悪になって夫は席を立ってしまう.

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彼は外で待ち、彼女が出てくれば後を追う.とある色大理石の美しい教会の場面でキャメラはロングで二人を映す.

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彼女は足が痛いと石段に腰掛け裸足になると、彼は痛むのかと労りの声を掛け横に座る.彼女の質問、十五年前の結婚の夜に泊まったホテルはどれだと尋ねる.解るはず無いのに彼はあれだろうと指さすが外れである.彼が他にどれだろうと見ている中に彼女は一人腰掛けていた石段の建物に入って行き、十五年前に結婚した日に泊まった部屋が開いていたら見せてくれと頼んで階段を上っていく.

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彼も後を追っていくと彼女はベッドに横たわり、枕に顔を埋めてまだあなたの匂いがするとまで云う.彼は勧められて一旦ベッドに腰を下ろすが立ち上がってしまう.

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このドライブは九時までには帰れるようにという約束だったので彼はそれを告げるが彼女は知らぬ顔である.その時ホテルの柱時計が鳴った.思わず鳴る回数を数えたら八回鳴った.一瞬間を置いて外の教会の鐘が鳴る.

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彼は小さな窓の前に立っていたがそこをどくと窓の外に教会の鐘楼が見えて鐘が揺れているのが見える.ここで終わりでやい撮りロールが流れる.

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アッバス・キアロスタミはこの映画を観て益々好きになった.いくらでもアイデアーが出てくるどんな環境であろうと映画が撮れる監督である.この映画は劇場で観れば解るかも知れないがデジタルキャメラで撮ったらしいが DVD では解らない.

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